米国と欧州が大きな政治変動リスクに直面する中、日本の信用リスクが米国を7年半ぶりに下回った。利回りを求めて外債に投資していた日本の投資家が、相対的に政情が安定している日本の債券に回帰するとの見方も出てきた。

  CMAによると、日本の5年物CDSは1月末、09年6月以降で初めて米国を下回り、現在は26ベーシスポイント(bp)で推移。米CDSは11月のトランプ大統領の選出から拡大し現在は27bp。また、4月の大統領選で「反ユーロ」のルペン氏勝利の可能性もあるフランスのほか、ドイツやイタリアを含む欧州各国のCDSも年初来で上昇している。

トランプ大統領
トランプ大統領
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  トランプ政権による移民・難民の入国制限などで米国では対立が深まり、政権内部でもフリン大統領補佐官が辞任するなど混乱が生じている。また、英国が欧州連合(EU)から離脱することになった欧州では、フランス大統領選のほかオランダやドイツでも総選挙が行われ、移民流入やEUに否定的な勢力の伸長が懸念されている。

  みずほ証券の香月康伸シニアプライマリーアナリストは「政治の安定は投資の大前提」とし、「海外には依然不透明感が残り、円債回帰は起こり得る」と話す。ユーロ圏のフランス大統領選については「欧州に背を向ける選択をすればブレグジット以上のインパクトがある」と指摘。また米国はインフレ政策で金利上昇懸念があるのに対し、日本は米欧に比べ「政治的安定がクローズアップされている」という。

  トランプ政権はかねて対日経済問題として、貿易不均衡や円安を挙げていた。ワシントンで10日に行われた日米首脳会談では、マクロ政策や貿易の枠組みなどで経済対話を行うことで合意したものの、具体的な政策要求はなかった。

外債売り越し

  財務省の統計によると、それまで1年半買い越しが続いていた対外中長期債投資は昨年12月、今年1月と2カ月連続で売り越しに転じた。フコクしんらい生命保険の林宏明取締役は、「欧米への投資はリスキー」なのに対し、国内債は「為替リスクもなく、金利上昇もある程度コントロールされている」と述べた。

国民戦線のルペン党首
国民戦線のルペン党首
Photographer: Marlene Awaad/Bloomberg

  日本銀行のマイナス金利政策で昨年7月には一時史上最低のマイナス0.3%まで低下していた10年物国債利回りは、今月3日には一時約1年ぶりの0.15%まで戻した。ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸年金研究部長は、「日本の金利が上がったから、無理して外債に行かなくて良くなった。国内でいいやと言うことになっている」と話す。

  JPモルガン・アセット・マネジメントの塚谷厳治債券運用部長も、「日銀が国債買い入れ規模を再度拡大しつつあるのと、トランプ大統領の為替相場に対する口先介入で国内投資家の間で海外投資に対する不安が浮上しており、日本国債に目が向きやすくなっている」と述べる。

金利差は依然大きい

  もっとも日本国債と外債の金利差は依然大きく、10年物国債の日米利回り格差は2.39%となっている。みずほ証の香月氏は、現状のイールドカーブならば、来年度は日本国債の約6割がマイナス金利で発行されることになると予想。「運用難の状況は変わらず、地方債や財投機関債、社債などでプラス利回りを求めざるを得ない環境が続く」と指摘する。

  野村証券の魚本敏宏チーフクレジットストラテジストは、国内では利回りの高い商品が少ないこともあり、引き続き「できれば海外に行った方が良い」と見ている。世界的に政治リスクが高まる中でも、比較的米国は安定的だとみているため、米国の社債などへの投資が有効だと語った。

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