安倍晋三首相は現地時間の10日午後(日本時間11日未明)にワシントンでトランプ米大統領が就任後初めての日米首脳会談に臨む。強固な同盟を内外にアピールすると共に、個人的な信頼関係を築きたい考えで、経済関係については新政権が重視する米国の雇用などで日本企業の貢献を説明し、理解を求める。

  安倍首相は9日、日米同盟が「さらに強固なものとなっていく」とのメッセージを発信する会談にしたいと述べた。経済関係については、「これからもウィンウィンの関係として共に発展していく」とした上で「自由で公正なルール」に基づいて、さらに発展させていくことを「確認する」会談にしたいと語った。出発前の羽田空港での発言場面をNHKが放映した。

トランプ氏は大統領令を連発
トランプ氏は大統領令を連発
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  大統領選では日本など同盟国に駐留軍経費の負担増を求める発言をしていたトランプ氏は1月5日、ツイッターへの投稿で「トヨタは米国向けカローラの生産工場をメキシコのバハに新設すると言っている。とんでもない!米国に工場を建設しろ、さもなければ高い関税を支払え」とコメント。就任後の同31日には日本や中国が「通貨安誘導」をしていると批判している。

  慶応大学大学院の岸博幸教授は、日本はトランプ大統領が「どう出るか分からないというので非常に怖がっている」と指摘。日米の同盟関係を守るために、経済面で米側に「サービスし過ぎになるリスクはある」との懸念を示した。米側への経済分野での提案は「日本のメリット」をしっかり追求したものであるべきとした。 

日米同盟

  首脳会談に先立ち、マティス国防長官が3日から4日にかけ、トランプ政権の閣僚として初めて来日。安倍首相や稲田朋美防衛相と会談し、沖縄県・尖閣諸島について米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲であることや、「核の傘」の提供など従来の米政権と同様の方針が確認された。トランプ氏が言及していた米軍駐留経費については「全く議論はなかった」と稲田防衛相がマティス氏の会談の後の会見で明かしている。

日米防衛相会談
日米防衛相会談
Photographer: Franck Robichon/Pool via Bloomberg

  日米関係に詳しい慶応大学の中山俊宏教授は、訪日時のマティス氏の発言は日本政府にとって「満額回答だった」と指摘する。しかし「トランプ政権の特質として、大統領と閣僚が必ずしも十分に調整できていない」可能性もあるため、首脳会談で大統領本人に日本の立場を伝えることは「重要なミッションになるのではないか」との見方を示した。

経済関係

  トランプ氏が日本との貿易不均衡を問題視する中、通商政策も首脳会談の主要なテーマとなる見通しだ。自動車分野ではトヨタ自動車が名指しで批判されており、3日には安倍首相が同社の豊田章男社長と会談。豊田氏は「足元の情勢」について意見交換したことを明らかにしている。

  自民党の茂木敏充政調会長は9日、ブルームバーグのインタビューで、「1980年代に比べて日米は相互依存関係がずいぶん深まっている」として「実態の正しい理解が必要」と指摘する。トランプ氏は米国を「再び偉大な国に」したいと言うが、そのためには単に貿易政策だけではなく、エネルギー政策やインフラ投資など幅広い分野で協力していくことが必要との認識を示した。

  トランプ氏は9日、ホワイトハウスで行われた会合で米国の航空機システムや鉄道は「時代遅れ」であり、「これを全て変える」と語った。鉄道に関しては、中国と日本には「高速鉄道が至る所にある。われわれにはない」と発言。首脳会談を前に日本の新幹線を賞賛した。トランプ氏は道路や橋、空港を改善するため最大1兆ドル(約113兆円)のインフラ投資を行う考えを示している。

  ワシントンには麻生太郎副総理兼財務相と岸田文雄外相も同行。麻生氏とペンス副大統領、岸田氏とティラーソン国務長官も10日午前、それぞれ個別の会談を行う予定だ。

  政府関係者によると、首脳会談には麻生、ペンス両氏も同席する方向で調整しており、日本は両氏をトップとした日米の経済協議の枠組みについても議論したい考え。会談後には安全保障や経済に関する合意文書を発表する方向で調整しているという。

破格の厚遇

  首脳会談の後は、フロリダ州にあるトランプ氏の別荘で夫人らと夕食を共にするほか、両首脳がゴルフを行うなど、就任間もない多忙な時期に異例とも言える厚遇で安倍首相を迎える。去年11月に実施した会談の際に安倍首相がゴルフクラブを贈っており、早期に首脳同士のラウンドが実現する。外務省によると、安倍首相の祖父、岸信介元首相も在任中に当時のアイゼンハワー大統領とゴルフをプレーしている。

  首相に同行している萩生田光一官房副長官は9日(現時時間)、両首脳が「長い時間を共に過ごして率直に意見交換を行うことになるが、この機会を通じ、両首脳の間で確固たる個人的信頼関係を構築していただきたい」と語った。

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