米国のドル政策をめぐり、トランプ政権と通貨トレーダーの双方に混乱がうかがわれる。

  ドルの強さの好みをめぐり、ホワイトハウスが入り交じったシグナルを発して為替相場が不安定となる中、誰もが安心していられない情勢だ。米政権の政策案を見たところでも、トレーダーの不安は収まらない。インフラ支出の拡大や米製造業の再活性化、減税といった政策パッケージは経済成長率とインフレ率を押し上げ、強いドルをもたらす。

  しかし、このところ注目を集めているのは通商や移民に対する制限的な措置であり、成長見通しを後退させてドル安を招く。

  次期財務長官に起用され、指名承認待ちのスティーブン・ムニューチン氏は当初、近年の歴代政権が堅持してきた「強いドル政策」の路線を引き継ぐかに見受けられたが、その後、事態は不透明さを増している。トランプ氏は中国と日本が不公正な自国通貨押し下げ誘導に従事していると発言し、国家通商会議(NTC)のナバロ委員長は、ユーロが「甚だしく過小評価」されていると主張。ムニューチン氏自身も「過度に強いドル」は経済に短期的にマイナスの影響を及ぼす可能性があるとして、調整を図っていると受け止められる。

  みずほ銀行(ロンドン)のヘッジファンドセールス責任者、ニール・ジョーンズ氏は、「米国の強いドル政策は終わったというのが市場参加者の見方だ」とコメント。「しかし、強いドルは必ずしも終わっておらず、それが市場に多少のジレンマがある理由だ」と語った。

  こうしたジレンマの背景には、トランプ政権によるインフラ支出拡大や減税、規制緩和が長期的には成長押し上げにつながるとの期待がトレーダーの間に残されている点が挙げられる。

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は8日、0.1%低下の1236.22となり、年初来の下落率は2.5%に達した。昨年10-12月(第4四半期)には7.2%上昇していた。

  ドル相場の見通しを一層不透明にしているのは、トランプ大統領が最終的に成長戦略を断行するかどうか、誰もが確信を抱いているわけではない実態だ。

  ブラックロックのローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO)は8日、昨年11月の米大統領選後に市場を活気づけてきた政策実行のため議会と政権が立法化を果たすかどうか不確実であるため、事業活動は「減速」状態にあると話した。

  フィンクCEOはヤフー・ファイナンス・オール・マーケッツ・サミットで述べたもので、米10年債利回りは2%を割り込むか、4%を上回るか、もしくはその双方の動きが市場で見られる可能性があると予想した。10年債利回りは8日、2.35%となった。

  一方、米金融当局が昨年12月に0.25ポイントの追加利上げに踏み切ったことはドル押し上げに作用した。だが、今年1月の米雇用統計で賃金が伸び悩んだことで、トレーダーが現在織り込む6月以前の利上げ確率は50%を下回っており、先の利上げに伴うドル高の勢いは失われている。

  ジェフリーズ・グループ(ニューヨーク)の通貨ストラテジスト、ブラッド・ベクテル氏は、次回利上げの「タイミングをどう織り込むべきか、市場は混乱状態にある」と分析。さらに、このところの政権当局者の「発言はドルにネガティブなものばかりで、ニュースの流れにも干満があり、トレーダーは身動きが取れなくなっている」と説明した。
  
原題:Dollar Policy Confusion Keeping Currency Traders Up at Night(抜粋)

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