日米首脳会談を来週に控えた安倍晋三首相は3日夜、トヨタ自動車の豊田章男社長と都内で夕食をとりながら意見交換した。菅義偉官房長官が同席した。

  会談後、取材に応じた豊田氏は「日頃のお礼と足元の情勢をお話しさせていただいた」と語った。具体的な内容には言及しなかったが、「いい話になったと思う」とも述べた。記者団からは会談の中で、トランプ大統領に対する認識やアメリカでの雇用創出についてどのように話したか質問が出たが、明言は避けた。

  安倍首相は訪米し10日にトランプ大統領との日米首脳会談に臨む。トランプ氏は就任前から、日本市場で米国車がそれほど売れていない一方で、米国市場で日本車が大量に販売されていることから、日米の自動車貿易が不公正と指摘していた。

  また、トランプ氏は北米自由貿易協定(NAFTA)を問題視し、自動車メーカーなどが労務費の安いメキシコの工場で生産して、域内関税ゼロで製品を輸出していることが米国の産業や雇用に悪影響を与えているとして、見直す方針を示している。

  米国内の雇用が海外の工場に奪われているとのトランプ氏の批判を受けて、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とフォード・モーターが米国での新規投資や追加雇用を発表し、トランプ氏は1月9日にツイッターで両社を称賛した。

  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは1月27日付のリポートで、日本の自動車輸入で米国はドイツの後塵(こうじん)を拝しており、「日本がドイツ車に対して環境基準を甘くしているということは成りたたない議論である。トランプ大統領の自動車批判は全くフェアではない」と指摘。トランプ氏は「マクロの貿易不均衡を是正するよりも、もっとスケール観の小さな自国の自動車産業の利害を優先させているようにみえる」との見方を示した。

  トヨタは米国時間で1月9日、米国で今後5年間に100億ドルを投資する方針を表明している。同社は北米で米国工場のほか、メキシコの工場でピックアップトラック「タコマ」を生産し、カナダの工場で小型車「カローラ」やレクサスのSUVモデル、SUV「RAV4」などをつくっている。メキシコではカローラの新工場を建設する計画もある。

  安倍首相は1日の国会答弁で、トランプ氏と1月28日に電話会談した際に、日本の自動車輸出の状況などについて説明したほか、トヨタの中型セダン「カムリ」の米国生産では部品の現地調達率が75%と米ビッグスリーよりも高いなどと伝えたことを明らかにしている。

  トランプ氏はまた、日本などの通貨が過小評価されており、対米貿易で有利になっていると批判している。これに対して、安倍首相は1日の国会答弁で、日本が円安誘導しているとのトランプ発言に反論し、物価安定目標2%達成のため日本銀行に適切な金融政策を委ねており、「円安誘導という批判は当たらない」と話した。必要なら米側に日本の姿勢を説明する考えも示した。

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