福島の原発事故後に安全基準が世界的に強化されたことで原発の建設期間が長期化し、建設の費用が増加している。2000年代には「原子力ルネサンス」とも呼ばれ地球温暖化対策の有効な手段としてもてはやされたが、新型原子炉の製造を手掛ける東芝や傘下の米ウェスチングハウス・エレクトリックは逆流し始めた流れに飲み込まれている。

  原発メーカー各社は、電力の供給が失われても冷却材が自然に循環して3日間炉心を冷却できるような設備が採用された「第三世代プラス」と呼ばれる原子炉の建設を進めている。福島第一原発事故で起きたような電源喪失による炉心溶融(メルトダウン)を防ぐほか、耐震性の向上など安全性が高められている。しかし、規制強化により多くの建設計画が設計変更に直面しており、費用がかさむことから、政府の支援なくして前進しなくなるのではとの懸念が生まれている。

  東芝は15年にウェスチングハウスを通じて原子力発電関連の建設・サービス会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)を買収。S&Wが取り組んでいる原発建設事業のコストが大幅に増加することで資産価値が取得時の水準を下回る結果、取得価格と純資産の差にあたる「のれん」が数千億円規模に上り、10ー12月期決算で全額を減損処理する可能性があると昨年12月に発表した。

  元米原子力規制委員会のレイク・バレット氏は「原子力産業は厳格な規制基準、建設の複雑化、業界全体の原発建設経験不足といった課題を抱えており、これが建設費の上昇を引き起こしている」と指摘。「何十億ドルもの資金が小さな社会的リスクを減らすために使われている。複雑化した原子炉の設計がコストの状況を悪化させている」と話した。

  世界原子力協会が今年発表したリポートによると、欧米では原発建設コストが過去20年間で2-3倍に増加。1998年には1キロワット当たり2065ドルだった米国の原発建設コストが2015年には同5828ドルまで拡大。欧州では2280ドルから7202ドルまで増えた。

アレバも経営難に

  苦境に立たされているのは東芝だけではない。フランスの原子炉メーカーアレバはフィンランドで進めている欧州加圧水(EPR)型原子炉の建設で10年近く遅れが生じた結果、建設費用が大幅に上振れ。仏政府から45億ユーロ(約5500億円)の資本支援を受けるとともに、フランス電力(EDF)に原子炉事業を売却する。

  フランス電力(EDF)が英南西部で手掛けるヒンクリーポイント原発にはEPR型原子炉2基が建設される予定で、その費用は最大180億ポンド(約2兆5000億円)にかさむ見通し。またEDFによるフランスのフラマンビル原発でのERP型原子炉建設は6年遅れており、コストは07年1月の建設開始時と比較して3倍に増加している。広報担当者は、この問題は最新の原子炉設計に対して業界が十分な知見を有していないことなどが起因していると説明した。

  東芝は原子力事業をエネルギー事業の再注力分野として位置付けており、昨年3月に発表した事業計画では、18年度の売上高予想5兆5000億円の約2割を原子力で稼ぐ方針を示していた。同社の綱川智社長は1月27日の会見で、原発事業について、建設を含めて受注するかタービンなど機器だけの受注にするか中期計画で見直す考えを明らかにしている。

54億ドルで取得

  東芝は06年に原子力事業の将来性に賭け、54億ドル(約6100億円)でウェスチングハウスの株式を取得。ウェスチングハウスの開発した第三世代プラスの加圧水型原子炉「AP1000」をてこに、中国やロシアを中心に原子炉の受注を目指していた。AP1000は中国と米国で計8基に採用されている。

  米シンクタンク、カーネギー国際平和財団原子力政策プログラム担当のシニアフェロー、マーク・ヒブス氏は、アレバやウェスチングハウスのような企業が直面している基本的な課題は、1970-80年代の原発建設ラッシュ以降発生している建設ペースの低下だと指摘する。

  同氏は電子メールで「一定の水準で継続できてるときには原発建設も良い方向で動く」とした上で、「アレバやウェスチングハウスもそのうち新型炉の建設でそういった水準に達するとは思うが、まずは建設のペースを改善しなければならない」との見解を示した。

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