営業担当者なら皆、経験があるだろう。士気を鼓舞する朝のミーティング、収入目標、商品を売るか、解雇かの緊張感-。

  米銀JPモルガン・チェースのエリートが集うウェルスマネジメント部門のオフィスでも、セールスの手法は他の業界と同じだ。富裕層顧客を担当するプライベートバンカーらは自社にとって高額の手数料収入を生む特定のファンドや商品に顧客資産を誘導するよう求められる。複数の元従業員が述べた。

  銀行のクロスセル、つまり抱き合わせ販売の慣行は、昨年のウェルズ・ファーゴの不祥事をきっかけに当局から注視されるようになった。ウェルズ・ファーゴの行員は販売目標達成のために顧客名義の虚偽口座を開設していた。この件は、従業員向けインセンティブプログラムが顧客の利益を損ねているのではないかという旧来からある問題に光を当てた。

  クロスセルは違法ではない。企業は皆、自社製品を売りたい。JPモルガンも同じだ。ただ、米銀最大手である同社は顧客に提供できる自社商品があまりに多い。プライベートバンク部門元従業員らは叱咤激励と報奨システムに違和感を感じたと話す。顧客にとって最良でないと思われるにもかかわらず、特定の投資商品を勧めることを強いられたように感じたからだ。

  JPモルガンの行員が虚偽口座を作ったという指摘はない。同行は投資の幅広い選択肢を提供するとともに、自社商品を勧める方針を顧客に開示することで、富裕層顧客の役に立っていると言う。広報担当のダリン・オドゥヨイエ氏によれば、行員に委託手数料を支払うことはしていない。銀行と顧客双方の利益になるシステムだという。

  JPモルガン・プライベート・バンクの元従業員7人は、アドバイザーというよりもセールス担当者の仕事だったと振り返った。

  元従業員らによると、1日の仕事は午前8時の営業会議で始まる。会議はパークアベニューの本社ビルの上階にある「ウォールーム(作戦司令室)」で行われる。その後顧客への連絡が続く傍ら、収入目標の達成状況がホワイトボードに記される。終業時間前にもう一回会議があり、お勧めの投資商品を伝えられる。何を売るべきか、どうやって売るべきかの説明だ。バンカーらの報酬「スコアカード」には、自社にどれだけ収入をもたらしたかが記録されるが、顧客が買った投資商品のパフォーマンスは問われない。

  従業員のほかに同行プライベートバンク業務に詳しい十数人が匿名を条件にその実情を語った。同部門の現従業員は発言を拒んだ。

  バンカーらは自社の商品を売るよう明確な指示を受けていたわけではないが、JPモルガンに最大の手数料をもたらす商品を売らない限り、収入への貢献についての目標を達成するのは絶対に無理だったという。これは自社の商品に限定されず、JPモルガンが手数料の分配を受けられるパートナー企業の商品でもよい。それ以外のファンドや投資商品を売ってもよいが、それでは収入貢献は認められなかったと元従業員3人が述べた。

  オドゥヨイエ氏は、プライベートバンク従業員の成果の評価は「バンカーらが顧客の役に立ったか、リスク管理についての当行の優先事項を守っているかを反映するように設計されている」と説明した。

原題:In JPMorgan’s ‘War Room,’ Private Banking Meets Cross-Selling(抜粋)

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