物言うヘッジファンドは日本で、価格が適正でないかもしれない企業の合併・買収(M&A)が繰り返されていると認識しつつあるようだ。難しいのは、日本に深く根差す企業同士のなれ合い文化を克服し、少数株主にとってより良い条件を得ることだろう。

  セス・フィッシャー氏率いるオアシス・キャピタルがパナホームの最大少数株主であることが明らかになった。住宅事業を手掛ける同社の未保有株46%取得のため親会社のパナソニックが実施する株式交換の条件改善をオアシスは求めている。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、競争原理が働く企業買収なら、取得価格はもっと高くなるとフィッシャー氏は訴えている。

  このケースは、日本生命保険による三井生命保険の株式公開買い付け(TOB)の価格をめぐり、三井生命株を保有していたシンガポールの投資会社TIHTインベストメント・ホールディングスが低過ぎると主張し、東京地方裁判所に適正価格の決定を求めた事例と似ている。

  ファンド側の主張がどこまで正しいかを判断するのは難しいが、日本勢同士の国内M&A案件を見れば、やはり安過ぎるようにみえる。そのような対象案件の株価純資産倍率(PBR)は1.1倍(中央値)。これはフランスの半分、英国の3分の1程度だ。

  債務を勘案した企業価値に対する価格は0.64倍(中央値)で、これはフランスやドイツ、英国、米国で国内勢同士の企業2社が取引した場合に比べて小さい。

  日本勢同士のM&Aはまた、利益と比べても安く見える。EBITDA(利払い・税金・ 減価償却・償却控除前利益)に対して5.3倍にすぎず、英国の9倍に見劣りがする。 

  日本では、企業の買収価格に反発の声が出ることはあまりなく、あったとしても裁判に持ち込むのは難しい。まず、企業価値の評価は将来のキャッシュフロー見通しなどが絡み、主観的だ。また、大多数の株主が決定し受け入れた内容を覆すインセンティブは判事側にほとんどないだろう。

  とはいえ、オアシスやTIHTは興味深い実験の機会を与えてくれたかもしれない。日本勢以外の買い手候補に案件がオープンになればどうなるかという実験だ。さらには、日本の株主が果たして、特にアジアの近隣諸国など外国勢への身売りに前向きになるのかという疑問も浮上する。

  物言うファンドは最終的に、価格は諸問題のほんの小さな一部にすぎないと気付くかもしれない。日本企業同士のなれ合い文化を崩すのは、そう簡単ではない。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません。)

原題:Hedge Funds Are Right. All-Japan Deals Look Too Cozy: Gadfly(抜粋)

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