米連邦準備制度理事会(FRB)の副議長を務めたドナルド・コーン氏は、「異例の不透明な時期にある」と誰かが陳腐な表現を口にするのを好まなかった。1980年代のレーガノミクス黎明(れいめい)期から2000年代後半の金融危機に至るまで、40年に及ぶ米金融当局でのキャリアを通じ多くを経験してきたからだ。だが、そんなコーン氏も今やこの決まり文句がとうとう現実になったと感じている。

  2月1日まで2日間の日程で、今年初めての連邦公開市場委員会(FOMC)会合に臨むイエレンFRB議長をはじめとする当局者は、トランプ政権発足に伴って生じた広範にわたる不確実性に直面している。それは税制の大幅な変更や多岐にわたる政府規制緩和、移民や貿易に対する厳格な制限の可能性といったものだ。主要政策金利が過去最低近辺にある中で、最大限の雇用と物価安定の2つの目標に近づきつつある金融当局にとって、いずれもが難題となり得る。

米連邦準備制度ビル
米連邦準備制度ビル
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  イエレン議長は今月19日、米スタンフォード大学経済政策研究所で行った講演で、「不確実性が広がっている」と指摘し、実際の政策が米金融当局の予想から「大きく異なったものに行き着く」可能性があると語った。当局者が昨年12月に示した最新の経済予測では、17年は中央値で3回の利上げが見込まれているが、今週のFOMCは金利据え置き見通しが大勢だ。

  想定される難題のうち、移民と貿易を取り上げてみよう。イスラム圏7カ国からの入国を制限するとした米大統領令と、メキシコ国境の壁建設費用をどちらが負担するかで同国のペニャニエト大統領とトランプ米大統領が押し問答をしたことで先週、この2つの問題が最前線に浮上した。

  外国人の米国入国と定住が厳しく制限されれば、労働力の伸びを鈍化させ、インフレ高進のリスクを冒そうと望まない限り、金融当局が相殺するには無力であるような経済の減速をやがて招くことになる。

  他方、メキシコないし中国と貿易戦争になれば、米金融当局にとって一層深刻な悪夢だ。米国への輸入品に対する関税引き上げでインフレ率が上昇するとともに、消費者の購買力低下で経済成長率は押し下げられるだろう。

  現在はブルッキングズ研究所の上級研究員であるコーン氏は26日、ナショナル・エコノミスト・クラブで講演し、「悪い事態しか考えられない」とコメントした。

  独アリアンツの主任経済顧問モハメド・エラリアン氏は、景気悪化時には金融当局が緩和策で対処すると予想する。しかしコーン氏は、余りにも緩和的な政策スタンスを追求することでインフレ期待の危険な上昇をあおることがないよう、当局は注意しなければならないと語った。

原題:Trump Trade, Travel Tactics Add to Uncertainty at Yellen’s Fed(抜粋)

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