日本銀行が金融政策の現状維持を決定した。今年は日米金利差が拡大する見通しで、円安傾向が続けば日本経済にはプラス効果が期待できる。日銀の望むところだが、海外からの追い風が向かい風に変わると楽観ばかりはしていられない可能性もある。

  日銀は長期金利を0%程度に誘導することを通じて、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに伴う日米金利差の拡大を公に認めている格好だ。これはトランプ米大統領の経済政策にかかわらず、今年は円安が続くとエコノミストの多くが予想する根拠となっている。

  同時に、円安が続いた場合には黒田東彦総裁が批判を受ける要因にもなりかねない。輸入物価の上昇が急激で賃金上昇が追い付かない場合、家計に打撃を与える可能性があるためだ。

  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、「春先以降円安有害論が出てくるかもしれない」と指摘する。円安になっても賃金が実質プラスにならないと循環的な物価上昇が実現するか不透明なためで、「春闘による所得の改善なしに春以降の円安は限界論が出やすい」と話す。

円安のリスク

  円相場は昨年10月末から対ドルで一時約11%下落。31日午後は1ドル=113円台前半で取引されている。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは4日付のリポートで、今年の国内の最大のリスクは「円安進展が家計の実質購買力を抑制し消費低迷が続くこと」と指摘している。

  どの程度の円安が望ましいかは経済情勢による。2015年に円相場が1ドル=120円まで下げたときに、当時の甘利明経済再生担当相は、過度の円安が進めば経済のファンダメンタルズから離れると指摘したこともある。昨年9月に金融政策の枠組みを長短金利を目標に切り替えた今、日銀が円安圧力を緩和する一つの手段は0%程度としている長期金利の誘導目標を引き上げることだ。

  ただ日銀はその場合でも拙速は避けたい考えだ。事情に詳しい複数の関係者によると、日銀は物価上昇率がたとえ1%に達しても、長期金利の誘導目標引き上げには慎重なスタンスで臨む構えという。

  日銀は、2000年のゼロ金利政策の解除や06年の量的緩和政策の解除とそれに続く2度の利上げが時期尚早だったと批判を浴びた経験がある。日銀前理事でみずほ総合研究所のエグゼグティブエコノミストの門間一夫氏は、「今度は3度目なので絶対批判が起こらないという状況を目指して政策運営をやっていくと思う」と述べ、「そんじょそこらのことでは金融緩和の手を緩めることはしばらく考えられない」と話した。

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