マジェド・モウグニ氏はアメリカンドリームを体現している。中東出身の貧しい難民だった同氏は、ホテルでの皿洗いや当時の米フォード・モーター最高経営責任者(CEO)の車の駐車係などを経て成功への階段を上り、弁護士登録した。同CEOが退任後に使っていたオフィスを現在、事務所としている。

  モウグニ氏は自動車メーカー各社のメキシコ生産を数カ月にわたって批判してきたトランプ米大統領の歓心をフォードの上級幹部らが買おうとしている背景には、今後の事業計画などの問題があるとみている。だが、大統領が中東7カ国の国民の入国を一定期間禁止する大統領令を発表したことは別問題であり、モウグニ氏はフォード幹部が先週末、沈黙を守ったことに失望を隠さない。

  「私はトランプ氏が禁止しようとしている製品だ」。モウグニ氏はこう語り、「軽率だ。この国は移民の国だ」と続けた。

マジェド・モウグニ氏
マジェド・モウグニ氏
Bloomberg

  自動車メーカー各社は綱渡りをしている。トランプ大統領が打ち出す大気汚染防止基準や法人税、貿易に関する政策が各社の将来を左右する中で、トランプ氏の顔色をうかがっている。考慮すべき他の問題とのバランスも必要だ。米自動車大手3社はいずれもミシガン州に本社を置く。トランプ氏の予想外の大統領選勝利に貢献した州だが、同氏の入国禁止令の影響を受ける中東出身者が数多く暮らす場所でもある。

  フォードのビル・フォード会長とマーク・フィールズCEOは30日、トランプ大統領の入国禁止策、「および当社の価値に反するいかなる措置」をも支持しないとの声明を連名で発表した。ゼネラル・モーターズ(GM)は29日、米国に戻ろうとして困難に直面しているビザ保有の社員を支援するとの通知を社内向けに出した。

  フォード本社があるミシガン州ディアボーンは、人口の30%余りがアラブ系。同州は2005-15年にイラクとシリアから1万9545人の難民を受け入れた。共にトランプ大統領が入国を禁止した7カ国の一角だ。

  自動車メーカーの大半は入国禁止令に先週末の段階で声を上げなかった。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)やトヨタ自動車、日産自動車、現代自動車、ホンダはコメントを控えた。

  モウグニ氏はレバノン内戦から逃れるため1977年に家族で米国に移住。当時6歳だった。同氏は「フォード社とフィールズ、フォード両氏がトランプ大統領と親しくなろうとするのは、その範囲であれば同社にとって悪いことと思わない」とした上で、そうであっても「彼らは今回の政策が世界各地に徐々に広がる恐れがあることについて抗議も示すべきだ」と述べた。

原題:Ford Breaks From Trump Over Ban as Detroit Muslims Protest (1)(抜粋)

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE