元ヘッジファンドマネジャーのジョン・R.テーラー氏にとって、世の中を定義するのはサイクルだ。自身が上り坂で為替ヘッジファンドを創業して世界最大となり、下り坂でその解体を取り仕切ったのはその一例だという。

  政治学・欧州史の元研究者であるテーラー氏(73)にとって、為替ヘッジファンドのFXコンセプツでの経験は一つのサイクルに映り、予測の指針として使う統計的パターンに通じるという。マンハッタンのミッドタウンにある地味なオフィスの向かいで昼食を取りながらインタビューに応じたテーラー氏は、「往復35年の旅だった。35年は図らずも私のお気に入りサイクルの1つだ」と語った。

ジョン・テーラー氏
ジョン・テーラー氏
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  同氏は1981年にFXコンセプツを創業し、2008年に運用資産を約140億ドルに膨らませた。その後、金融危機をきっかけとしたボラティリティー上昇とトレンド不足でFXコンセプツの予想は不発に終わり、投資家の資金引き揚げを受けてビジネスが徐々に衰退。FXコンセプツの親会社は2013年に破産申請した。親会社の破産に関連した手続きを2年前に終えた同氏は今、再び成長の局面に入っている。自身の洞察力に対し年2万5000ドル(約287万円)を支払う顧客名簿を作る新たなベンチャー事業に乗り出しているのだ。

  最新の試みであるテーラー・グローバル・ビジョンは為替や商品、金利の予測で数量的モデルを採用しており、一部は1970年代に開発されたものがベース。同社の顧客リストは約50件で、国際的銀行や地方銀行、年金、トレーダーも名を連ね、同社のリポート代を自腹で払う顧客もいる。

  相場転換のタイミング見極めに成功したテーラー氏の実績を評価するプラサン・パテル氏は、10年余りにわたりリポート代を支払い続けている。ニュージーランドのオークランドに本拠を置くファミリーオフィス、コア・インベストメンツ・グループで市場グループ責任者を務めるパテル氏は、「ジョンは相場転換がその日のニューヨーク時間午前1時や東京時間の午後5時に起きるとさえ言う。私の知る限り20年にわたって市場に参加する人でこのような正確さで予想できる人はいない」と話す。

  その良い例としてパテル氏が取り上げるのは、昨年10月半ばにNZドルのエクスポージャーについて現状維持を勧めたテーラー氏の助言だ。NZドルはその翌週に約3%上昇したため、リポート代を十二分に上回る利益を得られたという。

  パテル氏はFXコンセプツの全盛期も最悪期も知っていると述べた上で、「今の方がいい。以前は会社が大き過ぎて誰もがジョンを追いかけていて、彼には時間が無かった。われわれは今得られる個別のアドバイスを気に入っている」と語った。

  テーラー氏は破産手続きの一環としてヘッジファンドのリサーチ部門を買い取り、FXコンセプツ・ニューズレターとして発足したものにテーラー・グローバル・ビジョンの名前を冠した。FXコンセプツの全盛期に比べると、同氏の今の事業規模はかなり小さく、ドル箱でもない。5年前は世界中に多数の従業員を抱えたが、現在はスタッフ3人。同氏の報酬も格段の差で、年間約30万ドルにとどまる。順風満帆の日々には数年連続で1200万ドルを稼いでいた。「私は飢えてはいないけれども(イタリアのコモ湖の高級ホテル)ビラ・デステで休暇を取ることもない」と打ち明けた。

  同氏の数量的モデルは、数十年の統計を利用し相場サイクルを見極め予想するもので、一部顧客からはユニークな手法だと呼ばれる。昨年6月の英国民投票で英国の欧州連合(EU)離脱が決まって以来、そのモデルは窮地に立たされる英ポンドを照準に定めている。同氏は「ポンドは対ドルで急落する」と予想する。

  ポンドは国民投票以降、対ドルで約16%下落し、10月7日には1985年以来の安値1ポンド=1.1841ドルを付けた。テーラー氏は1.15ドルへの下落を見込むが、それも「慎重な」予想だとしている。ポンドは1月27日に1.2550ドル前後で取引された。

英ポンドの対ドル相場
英ポンドの対ドル相場
Bloomberg

  テーラー氏はまた、ドルが今年の通貨別パフォーマンスで首位になると確信している。同氏のモデルでは、インターコンチネンタル・エクスチェンジが算出するドル指数は2017年を通して上昇し、18年1-3月(第1四半期)までは失速しない見通しが示唆されている。昨年12月に米金融当局がフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25ポイント引き上げた後、ドル指数は今年1月に14年ぶりの高値を付けた。

  テーラー氏は当分は引退せずに引き続きパターン分析に没頭する考えだ。「私はサイクルの信者だ。私の人生にもそれを当てはめ続ける」と話した。

  (マコーミック氏はブルームバーグ・ニュースのニューヨーク支局で債券・為替を担当する記者です。この記事はブルームバーグ・マーケッツ誌2月・3月号に掲載されます)
 
原題:FX Guru John Taylor Is Back, Minus the $12 Million-a-Year Salary(抜粋)

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