日本銀行は31日の金融政策決定会合で政策運営方針を決定する。現状維持が見込まれる中、物価上昇期待から早期の長期金利引き上げ観測も浮上しており、黒田東彦総裁が会合後の会見でどのような見解を示すかに市場の関心は集まっている。

  ブルームバーグがエコノミスト42人を対象に18-23日に実施した調査では、全員が現状維持を予想した。追加緩和期待は大きく後退しており、黒田総裁の任期の2018年4月まで追加緩和はないとの見方が37人(88%)と圧倒的多数を占めた。

  伊藤忠経済研究所の武田淳主席研究員は「トランプ米新政権の始動や英国の欧州連合(EU)離脱など海外情勢の不透明さが増しているため、当面は政策変更を行わず情勢を静観する」とみる。

  金融政策決定会合は従来、おおむね正午から午後1時の間に終了し、それから間もなく結果が発表される。黒田総裁は午後3時半に記者会見を行う。今会合の注目点は以下の通り。

展望リポート

  日銀は会合後、四半期に1度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公表する。複数の関係者によると、世界経済の改善や昨年12月の国内総生産(GDP)統計の見直しを受けて、2017年度の実質GDP成長率の見通し(政策委員の中央値)は上方修正される公算が大きい。

  黒田総裁は20日、スイスのダボスで、17年度は1.5%程度の成長を見込んでいると明らかにした。日銀が昨年11月に公表した前回展望リポートでは、同年度の見通しは1.3%だった。複数の関係者によると、コアCPI前年比は、1.5%上昇だった前回の見通しをおおむね据え置くか、上方修正しても小幅にとどまる公算が大きい。

総裁会見

  エコノミストの一部では、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比が年末から来年初にかけて1%に達するとの見方が出始めている。27日発表された昨年12月のコアCPIは前年比0.2%低下と、前月(0.4%低下)から下落幅が縮小。事前予想(0.3%低下)も上回った。

  富士通総研の早川英男エグゼクティブ・フェローは13日、都内で開かれた講演会で、「1ドル=110円台が維持され、原油も1バレル=50ドル程度が維持されると、17年度後半の物価上昇率は1%くらいまで上がってくる可能性はある」と指摘。物価上昇率が「1%に乗ってきた時に10年物長期金利のターゲットが本当に0%で良いのか、必ず議論になるはずだ」と述べた。

  物価上昇観測を背景に、金融政策の新たな枠組みでターゲットとしている長期金利を日銀が早期に0%から引き上げるのではないかという見方が浮上している。BNPパリバ証券やバークレイズ証券が今年後半の引き上げを予想しているほか、JPモルガン証券はリスクシナリオとしてその可能性を指摘している。

  ブルームバーグ調査では、長短金利操作の下でターゲットである長期金利(10年物国債金利がゼロ%程度)を引き上げるとの予想は42人中15人と、引き締め方向の見方が徐々に増えている。

  しかし、複数の関係者によると、2000年のゼロ金利政策の解除や、06年の量的緩和政策の解除とそれに続く2度の利上げは時期尚早だったと批判を浴びた経験から、日銀内では金融引き締めを急ぎ過ぎるリスクが強く意識されており、物価上昇率が高まっても、原油価格下落の影響のはく落や円安による一時的な動向かどうかや、物価目標2%に向けたモメンタムを慎重に見極める方針だ。

金融市場調節

  先週の新発10年物国債345回債利回りは序盤に0.045%まで低下したが、25日の日銀オペで残存期間1年超5年以下が買い入れ対象とならなかったことで、月間の回数が減らされるとの懸念から売り優勢に転じた。26日には一時0.09%と1カ月ぶりの水準に上昇。一方、27日には5年超10年以下のオペが増額されたことで、0.07%まで買い戻された。

  ブルームバーグ調査では、黒田総裁の任期中に、長期国債買い入れ増加ペースの年「80兆円」のめどを減額、ないし、めどの公表自体を取りやめると予想したのは42人中24人に達した。市場では、25日のオペを受けて長期国債の買い入れ額縮小(テーパリング)が視野に入ってきたとの見方から神経質な展開が続いており、黒田総裁がどのような見解を示すかも焦点だ。

貸出支援基金

  日銀は3月に期限が来る「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」を1年間延長するかどうかも決定する。ここ数年、1年ごとに期限を延長しており、昨年も1月会合で延長を決めた。

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