新潟県の米山隆一知事はブルームバーグのインタビューで、2016年10月の知事選で東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市、刈羽村)の再稼働に慎重な立場に転じた理由について、「いつまでも原発事故は収束しないということが分かった時点で、意見を変えるのは当然」と話した。同氏は過去に国政選挙に出馬した際には原発推進の立場をとっていた。

新潟県の米山隆一知事
新潟県の米山隆一知事
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  医師免許と弁護士資格を持つ上に、外資系金融機関ではクオンツ分析のプログラミングを経験。さらに、後方宙返りをニュートン力学を使って理論的に分析して40代で習得するという異色の経歴を持つ同氏。知事選では再稼働に慎重な姿勢を示した結果、与党優勢の状況から逆転し当選した。

  福島第一原発の事故から間もなく6年。東電HDによる調査ロボットを使った炉内調査の成果はまだ上がっておらず、同1-3号機内で溶け落ちた燃料が炉内のどこに堆積しているかなど判明していないことはいまだに多い。事故収束に向けた道筋の険しさが明らかになるにつれ、再稼働に対する意見は「段階的」に変わったという。

  「もう一度日本で事故を起こしたら、世界中から人は来なくなり、インバウンドとか夢のまた夢。日本人すら脱出しかねない」と危機感を示した。新潟県では約20年間にわたり人口が減少しており、同氏は首都圏からのアクセスが良いスキーリゾートや温泉を核とした外国人観光客の誘致や人口減少対策を検討している。

検証終了は19年度以降

  再稼働に向けては「きちっとした検証をして、相当事故の確率が低いということを示すべきだ」と指摘。17年度から事故の原因と健康生活への影響という二つの検証を同時に進行させる予定。その結果を避難計画に織り込んでいく手順を踏むと「2-3年かかる」とし、検証が終わるのは早くとも19年度以降になるとの見方を示した。

  柏崎刈羽原発は原子炉7基を合わせた発電出力が800万キロワットを超える世界最大規模の原発。22兆円にのぼる福島第一原発の廃炉や事故の損害賠償費用の大半を捻出しなければならない東電HDにとって、最大で年2400億円の収益改善効果をもたらす柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働が大きな鍵を握る。

  しかし、これまでに原子力規制委員会の安全審査に合格した10基の原子炉は全て加圧水型。柏崎刈羽原発では事故が発生した福島第一原発と同じ沸騰水型の原子炉を採用しており、これまで規制委の審査に合格した前例はない。

  東電HDが検討している原発事業の分社化が、新潟県の検証にどう影響を与えるかについては、他社との共同事業化で人材や技術が共有され「ある種の安全装置となるなら、プラス評価できるかもしれない」と述べた。事業再編によって過去の検証を踏まえた安全性向上の体制整備が進むのであれば、「真剣に検討してほしい」と述べた。

地域経済への影響

  原発1基が再稼働することは電力会社の経営に大きな影響を及ぼす。市町村単位で見ると、柏崎市や刈羽村の経済や雇用への影響は「多々ある」としながらも、「地方経済に与える影響は過大評価されているところがある」と指摘。原発を立地していることによる新潟県への交付金総額は年100億円に満たず、原発の稼働停止による歳入減は11億円にとどまる。1兆数千億円規模の同県の予算と比較すると大きくないとの見方を示した。

  政府として原発を推進するか否かは「基本的に選択の問題だ」とし、「エネルギー安全保障にこだわるあまり、安全を無視するのは自己矛盾。その逆もしかり」との考えを示した。

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