トランプ米政権発足からまだ日が浅いが、大統領が志向する経済政策の手法が徐々に明確になってきた。誕生1週間の政権の言動で浮かび上がった主な特徴を幾つか列挙する。

「輸入代替プラス」とも言うべき政策立案手法と共に産業政策の諸要素を活用し、高成長と雇用創出加速を目指す

  トランプ政権は従来型の輸入代替型戦略をほうふつとさせるやり方で、海外から米国内市場に出荷している米企業の生産施設を本国に引き寄せようとしている。そして、それに「プラス」する形で、海外市場向けの国外生産拠点も米国に移転させるよう目指す。雇用や賃金への望ましい効果を増幅させるため、政権は自動車など特定のセクターとのやり取りで産業政策の諸要素を追加している。

マクロとミクロの両面での取り組み

  こうした重点の置き方は、政権が追求するマクロとミクロの介入の組み合わせを浮き彫りにする。マクロレベルの中心は規制緩和、税制改革、インフラ、インセンティブの変更を通じた国内生産と米製品・サービスの消費の優遇という4点だ。ミクロでは、セクターごとの重点と道義的説得の選択的適用をリンクさせ、特定プロジェクトを結び付けるケースもある。

経済政策手段としてのシグナルと語り掛けの積極活用

  普通のエコノミストはこうしたミクロ措置の全般的な影響を否定しがちだろう。だが、語り掛けや期待、行動をもっと一般的なレベルで変えていくというインパクトによって、シグナル効果は極めて大きなものとなると指摘するエコノミストもいるだろう。トランプ大統領が雇用について何度も強調するとともに、ツイッター投稿も含む多様なコミュニケーション手段を積極的に活用していることで、このような効果は増強される。

アメとムチの哲学が支え

  アメとムチに支えられながら、政権と産業界との間で展開する暗黙の契約によって、メッセージは増幅される。とりわけ、規制緩和や減税のインセンティブと、「米国第一」の警告に十分反応しない企業に恥辱を与えたり罰したりするという脅しが挙げられる。

国境を越える関係については、米経済政策の立案における何十年もの常識をひっくり返すことも辞さない政権

  この手法は、国境を越える関係を支配してきたずっと前からのルールや慣行から逸脱する用意がある点にも及ぶと受け止められる。ドル高けん制発言や環太平洋連携協定(TPP)からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)解体の脅し、世界貿易機関(WTO)の下でのコミットメントに合致しない関税の賦課といった形を取っている。その過程で、他国との交渉戦略の一環として、トランプ政権は必要と判断すれば、深くしっかりと根付いた国際的な経済運営の原則に疑問を呈し、ひっくり返す用意があるとの立場を示唆している。

  政策的な意図の多くが、発表の段階から詳細な立案や継続的な実行の段階にまだなかなか移行できずにいる現状を特に考えれば、事態がどう収束するかは依然として分からない。さらに、議会にもこのプロセスの中で発言権がある。それでもエコノミストの一部は既に、展開されつつある米国の経済政策手法を中南米でポピュリスト政権が追求したものになぞらえている。開発経済学に精通した人々は特に、アルゼンチンやブラジルなどの国々が一度ならず追求した輸入代替型成長モデルを想起させられている。

  しかし、そのような比較は時期尚早で、誤解を招くものでもあるかもしれない。その理由は米国で支配的な経済、金融の初期状態が極めて異なっている点に限られない。

  トランプ大統領の手法が今後も続けば、世界経済との相互作用の在り方の取捨選択を含め、米経済の内部の動きや方向性の変化を大きく超えて、その影響は拡大するだろう。米国が国際金融システムの中心にある点を踏まえれば、米国で起きることは一国だけの問題にとどまらない。それは他の国々からの反応も誘発する可能性が最も大きく、ルールに基づく世界システムの従来の機能を揺るがす可能性もある。

  各国の国内および世界における責任のバランスを図る協力的な方法で、うまく運営できれば、その帰結は高水準で一層包括的な成長の持続と、真の金融の安定性の実現に不可欠な全般的な政策の改革といった類いのものとなる可能性がある。だが、国際的なまとまりや協調を欠いた形で進められれば、世界経済は分裂が増す方向に傾斜するだろう。そうなれば、現在と将来の成長と繁栄を減じ、金融の不安定性を招くリスクが増大することになる。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:Trump’s Economic Approach Is Taking Shape: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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