米企業が海外で生産した製品を米国に輸出しようとする場合、国境税を課すとトランプ大統領が公約したことを受け、そうした措置が歯止めなきドル急伸をあおり、世界経済に大きな被害をもたらすとの懸念が広がっている。だが実態は違うのではないか。

  トランプ大統領は就任間もない23日、企業幹部に対し、「もしあなた方が別の国に移転」して米国の雇用を削減するなら、そうした製品に「極めて大型の国境税を課すつもりだ」と語った。国境税の賦課は短期的にドル高を招く可能性があるものの、米国民の購買力向上は他国の報復の動きによって恐らく打ち消されるだろうと、シティグループやバンク・オブ・アメリカ(BofA)の通貨アナリストはみる。

  トレーダーや投資家が国境税についてさらに明確な情報を待ち望む中、トランプ大統領の脅しが外国為替市場にどのような意味を持つか、幾つかの見方を紹介しよう。

トランプ氏提案、これまでの政策とどう異なるか

  トランプ大統領は海外に工場を持つ米企業を狙い撃ちしたい考えで、低賃金の国々で生産し、製品を米国に逆輸入することで企業が得る利益を帳消しにする意向だ。

  米国は過去70年の大半の時期を通じ、関税引き下げによって自由貿易への障壁を低くしようと努めてきた。米国に輸入される工業製品の約半分は無関税で、関税が課されるのは総じて衣料品や履物、自動車だ。

  トランプ大統領が打ち出した中国やメキシコなどの国々からの輸入品への関税賦課は、当初こそこうした国々に対する米国の貿易赤字削減に寄与するかもしれないが、米企業の輸入コストや米消費者物価の押し上げにつながりかねない。

国境税はドルにどう影響するか

  モントリオール銀行の外為戦略グローバル責任者、グレッグ・アンダーソン氏(ニューヨーク在勤)は、法人税制の緩やかな改革が推し進められた場合、ドル相場は今年、貿易加重ベースで恐らく2-4%上昇すると予想。抜本的な改革が実施されれば、ドルの上昇率ははたやすく10-20%に達する可能性もあるとする。

トランプラリーのドル高
トランプラリーのドル高
Bloomberg

  シティグループのG10通貨戦略グローバル責任者、スティーブン・イングランダー氏によれば、重要なのは時間枠だ。同氏はリポートで、「税プランに盛り込まれるインセンティブによってドルが急激に上昇する可能性がある」とした上で、「そうした当初のインセンティブの効果が薄れれば、反転は荒々しいものとなるだろう」との分析を示した。

他国が報復したらどうなるか

  国境税導入に伴うプラス面があっても、他の国々が米国の輸出品に関税を課せば帳消しとなると、BofAメリルリンチの世界経済責任者イーサン・ハリス氏(ニューヨーク在勤)は話す。同氏は「輸出を促進し、輸入を抑制する政策を実施すれば、ドルにはとても大きな上昇圧力がかかるだろう」とする一方、「外国政府が同様に自国の輸出奨励、米国からの輸入抑制に動けば、通貨市場の不均衡を相殺することになる」と説明した。

トランプ氏にそれができるか

  米国の三権分立はいかなる分野でも強い抑制と均衡が作用するようになっているが、大統領は関税を通じて通商政策に強力な一方的な権限を持つ。憲法では議会に外国との通商を規制する権限を付与しているものの、議会側は過去何年間もそうした権限の多くを行政府に移譲してきた。

  それと同時に、下院共和党が法人税制の見直しのためにまとめた改革案には、実質的に輸出を補助して輸入に課税する内容の国境税調整措置が含まれている。

相場はどうなるか

  ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)の世界為替戦略責任者、アダム・コール氏(ロンドン在勤)は、世界の貿易を鈍化させる保護主義的政策に米国や他の国々が転換するリスクを金融市場は過小評価していると語る。

  同氏は「保護主義や法人課税について考えてみれば、ドルは特にユーロやポンド、スイス・フランといった欧州通貨に対して値上がりするだろう」と予想。一方で「日本経済は米国のように比較的閉鎖的」であるため、そうしたケースで円相場は、より隔離された状態となるだろうとコメントした。

原題:Trump Border Tax Seen as Questionable Catalyst for Dollar Gains(抜粋)

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