トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)からの永久離脱を表明し、2国間交渉を目指す方針を決めたことで、安倍晋三政権の通商戦略は試練を迎えている。TPPの重要性を引き続き米政権に訴える姿勢は変えていないが、米国から2国間交渉の提案があれば断れないだろうと専門家はみている。

  慶応大学大学院の岸博幸教授は24日の電話インタビューで、日本政府は基本的には多国間通商協定を望むが、ほかの選択肢も考えざるを得ないと指摘。米国から2国間協議の提案があった場合、日米関係の悪化を避けるためにも「当然受けざるを得ないだろう」と述べ、トランプ氏との信頼関係を築きながら、多国間協定の重要性の理解を求める両にらみの戦略を取るとみている。

  今後の通商交渉をめぐっては、政府がTPP対策本部を改組して新たな組織を立ち上げるとの25日付の日本経済新聞が報じている。萩生田光一官房副長官は同日午前の記者会見で、変更や統合を決めたわけではないと述べた上で、「検討の一つ」と述べた。その上で「どういう形で今後日本が掲げた自由貿易の旗に向かって国内組織を回していくかはこれからの課題だと思う」と述べた。

  安倍首相は25日の参院本会議で、米国が2国間協定を求めてきた場合の対応について、「トランプ政権の貿易政策については今後、閣僚人事の承認が進み、態勢が整うに従って具体化されてくることと思われる」と指摘し、「それまでは米国の方針を予断することは差し控えたいと思う」と答弁した。
  
  日本政府関係者によると、官邸内では米国との2国間協定に前向きな意見もあるが、日米首脳会談前に、日本政府側からそれに備えた動きをみせるのは適当ではないとの判断もあるという。

自動車

  トランプ米大統領は23日、ホワイトハウスで実業界首脳と会談した際に日本に言及、仮定の話としながらも自動車貿易の不均衡をめぐり、「もし例えば、われわれが日本に自動車を売り、日本がそれを不可能とする行動に出ながら、それでも米市場にやってきて大量に車を売りつけるなら、それについて話し合わなければならない。不公平だ、不公平だ」と日本を名指しした。

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   日米自動車摩擦は1980年代に激化し、日本の自動車メーカーが相次いで米国での現地生産に乗り出すきっけとなった。日本自動車工業会によると、日本の自動車メーカーが米国で生産する乗用車やトラックの約41万8000台が米国以外に輸出されているという。また米国市場で販売するが自動車の約75%は米国を含めた北米で生産されているという。

  メキシコに工場を開設する計画をトランプ氏が批判していたトヨタ自動車は、米インディアナ州プリンストンの組立工場に6億ドル(約680億円)を投資し、400人を追加雇用することを決めている。インディアナ州はペンス副大統領が州知事を務めていた。

  世耕弘成経済産業相は24日の閣議後会見で、日本では米国から輸入自動車に関税がかからないことに触れた上で、「関税以外の部分に関しても日本車と何ら差別的な取り扱いはしていない」と述べ、「機会を見てしっかり米国側に説明をしていきたい」と語った。

  萩生田氏は25日の会見で、対米協議で自動車を切り離すことについて、自動車分野に関してもTPP合意に「すでに数字も含めて書き込みがしてある。こういった部分を含めてこれから腰を据えて理解を求めていきたいと思っている」と述べ、「直ちに自動車の部分だけ2国間でということにはならないと思っている」と語った。
 

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