日本銀行が来週開く金融政策決定会合は、ブルームバーグの事前調査で全員が現状維持を予想した。緩和予想が1人もいなかったのは昨年12月会合に続き2回連続。一方で、今年末から来年初めにかけて物価上昇率が1%に達するとの予想を背景に、長期金利ターゲットの早期引き上げ観測も一部に出始めている。

  30、31両日の決定会合についてエコノミスト42人を対象に18-23日に調査した。追加緩和期待は引き続き後退しており、黒田東彦総裁の任期の2018年4月まで追加緩和はないとの見方が37人(88%)と前回調査(64%)を上回った。

  一方で、黒田総裁の任期中に、長期国債買い入れ増加ペースの年「80兆円」のめどを減額、ないし、めどの公表自体を取りやめると予想したのは24人、長短金利操作の下でターゲットである長期金利(10年物国債金利がゼロ%程度)を引き上げるとの予想は15人と、引き締め方向の見方が徐々に増えている。

  伊藤忠経済研究所の武田淳主席研究員は「トランプ米新政権の始動や英国の欧州連合(EU)離脱など海外情勢の不透明さが増しているため、当面は政策変更を行わず情勢を静観する」とみる。

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  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「日銀執行部は、長期金利を操作目標に掲げながら長期国債の年間買い入れ額についても指針を示している現在の矛盾を秘めた状態を、いずれ変更したいと考えている」と指摘。「市場環境が落ち着いた状況が続けば、4月にも年間買い入れ額のめど(80兆円程度)を声明文から削除する可能性がある」という。

  一部で浮上している指数連動型上場投資信託(ETF)買い入れの減額観測については「景気情勢や市場環境が改善していることや、株式市場の価格形成を歪(ゆが)めていることをなどを考えると減額が望ましいが、政治的にセンシティブであることや、市場に出口を意識させて長期金利のコントロールが難しくなるリスクなどを考えると、ETFの減額のみが先行して実施されることはない」と河野氏はみる。

年末から年初にかけ物価1%へ

  長短金利操作について、もう1つのターゲットである短期金利(日銀当座預金のうち政策金利残高に0.1%のマイナス金利を適用)が黒田総裁の任期中に引き上げられるとの見方はごく少数だが、長期金利については引き上げ観測が徐々に強まりつつある。背景には、今年後半から来年初にかけて消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比が1%に達するとの見方が出始めていることがある。

  富士通総研の早川英男エグゼクティブ・フェローは13日、都内で開かれたナウキャスト社の講演会で、「1ドル=110円台が維持され、原油も1バレル=50ドル程度が維持されると、17年度後半の物価上昇率は1%くらいまで上がってくる可能性はある」と指摘した。昨年11月のコアCPIは前年比0.4%低下した。27日に発表される12月分はブルームバーグ調査で0.3%低下とマイナス幅の縮小が予想されている。

  バークレイズ証券の山川哲史チーフエコノミストは「日銀はインフレ率に対する追い風を奇貨として17年度年央にかけ金融緩和を一部修正、実質的に『引き締め』へと転換する」と予想。市場における国債不足など技術的な要因もあり、7-9月にかけて「意図せざる減額を余儀なくされる」一方、長期金利は「市場における金利上昇圧力を『追認』する形で目標金利水準を限界的に引き上げる可能性が高い」という。

黒田総裁は腰が重いか

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは「過度な円高や円安が進んでいなければ、コアCPIの1%乗せが見えてくる秋口に長期金利の『ゼロ%』ペッグを引き上げる可能性はある」とみる。一方で、「仮に、米通貨政策によるドル高けん制が強まり、過度な円高が進んでいれば、これを引き上げるチャンスは到来しないだろう」と予想する。

  SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「トランプノミクスの具体化を踏まえ、米連邦準備制度理事会(FRB)があと2回利上げを実施、米10年債の3.0%超え、かつ日本のコアCPIが1%台に定着した場合には長短金利操作の変更を検討か」という。

  東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「黒田総裁は基本的に円安誘導を重視し続けると思われ、10年金利引き上げにはなかなか腰が重いのでないか」という。それでも、「FRBが国債とMBS(モーゲージ担保証券)の再投資を減額し始め、米国の長期金利上昇が日本に波及、かつコアCPIが1%台に乗るようになれば、ビハインド・ザ・カーブ的に10年金利を引き上げる可能性が出てくる」とみる。

為替次第では再び追加緩和も

  追加緩和観測は遠のいているが、為替相場の展開次第で再び頭をもたげてくる可能性もある。ドル円相場はトランプ米大統領や新閣僚の発言などで振れており、24日朝方に一時1ドル=112円53銭と昨年11月30日以来のドル安円高水準を付けた。

  信州大学の真壁昭夫経済学部教授は「企業がドル高に耐え切れなくなった段階で、トランプ大統領の政策が行き詰まると、市場は失望し、リスク資産には調整圧力がかかるだろう。これがリスクオフにつながり円高圧力を高める可能性がある」と指摘。その場合は「国内の景気減速懸念から長期金利のペッグ水準の引き下げなど、何らかの緩和措置が必要になる可能性がある」とみている。

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