世界的インフレ基調が高まる中、日本にも物価上昇が2017年中に戻ってくる可能性がある。しかし、経済の好循環に結び付くとは限らず、家計はインフレを迎え撃つほどの賃上げが期待できないかもしれない。

  インフレと賃金の関係は国によって異なる様相を呈している。米国やドイツでは物価上昇を背景に賃金上昇への期待も高まっているが、日本やオーストラリア、スペインでは賃金の伸び悩みが消費の足かせになるリスクが顕在化している。

  JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは、インフレ自体は家計や消費にマイナスと指摘した上で、欧米では賃上げが物価上昇の影響を打ち消す可能性があるが、賃金が上がりにくい日本では相対的に悪影響が大きいと話す。

  欧州でも、スペインはドイツとは違って失業率が約19%と高く、労働市場がひっ迫して賃上げを促す状況にはなっていない。オーストラリアは失業率は6%以下だが、もっと下がらないと賃上げ圧力の増加にはつながらないだろうとオーストラリア・コモンウェルス銀行のシニアエコノミスト、ギャレス・エアード氏は指摘する。緩やかな賃上げはインフレの「大きなブレーキになっている」とエアード氏は言う。

  日本の失業率は3.1%と20数年ぶりの低水準で、賃上げが加速してもおかしくない状況だ。しかし、増え続ける非正規雇用、企業と戦うのではなく協調を重んじる労働組合、低生産性分野に人手不足が集中するミスマッチといった要因が全体の賃上げを鈍化させている。

  さらに賃上げの足かせになっているのが物価との関係だ。原油価格上昇が物価を今年押し上げていくとエコノミストは予想し、昨年末からのドル高・円安が続けば物価にはさらに追い風となる。日本銀行の現在の物価見通しは16年度は0.1%の下落、17年度は1.5%上昇。

期待よりも実績

  しかし日本の賃金交渉で物を言うのは、物価の見通しではなく実績だ。この点については日銀も総括的政策検証で言及している。これに対し、欧米では中央銀行のインフレ目標が賃金決定の重要な要素になっていると言う。

  連合の神津里季生会長は24日のグループインタビューで過年度物価上昇を注視する従来構造からの脱却が必要だとしながらも、期待物価上昇率に基づいて労使交渉を進めるかどうかは慎重に判断する必要があると述べた。

  連合は今年の春闘で定期昇給を除いた月額の賃上げ(ベア)で2%程度を要求する方針だ。同様の要求をした昨年は、ベアが明確だった組合員の集計で0.44%の上昇だったという。全トヨタ労働組合連合会は今年3000円以上のベアを求めている。昨年も同じレベルの要求を出し、平均994円の上昇を得たという。

  足立氏は16年度の物価状況に加え、企業収益も同年度前半の円高もあってそれほどでもない中、引き上げは「ちょっと厳しい」とし、連合発表のベアで今年は0.3%-0.4%を予想。大和証券の永井靖敏チーフエコノミストは0.2%を予想し、社会保障負担も増す中で、賃上げに基づいた「景気の好循環は出ようがない」という。

  毎月勤労統計調査によると、実質賃金は15年まで4年連続で減少しており、16年も11月時点では前年を上回っているものの、その幅は1%に満たない。

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