日本銀行は物価上昇率が1%に達しても、長期金利の誘導目標引き上げには慎重なスタンスで臨む構えだ。事情に詳しい関係者への取材で明らかになった。

  複数の関係者によると、2000年のゼロ金利政策の解除や、06年の量的緩和政策の解除とそれに続く2度の利上げは時期尚早だったと批判を浴びた経験から、日銀内では金融引き締めを急ぎ過ぎるリスクが強く意識されている。

  エコノミストの一部では、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比が年末から来年初にかけて1%に達するとの見方が出始めている。しかし、複数の関係者によると日銀は、物価上昇率が高まったとしても、原油価格下落の影響のはく落や円安による一時的な動向かどうかや、物価目標2%に向けたモメンタムを慎重に見極める方針だ。

  物価上昇観測を背景に、金融政策の新たな枠組みでターゲットとしている長期金利を日銀が早期に0%から引き上げるのではないかという見方が浮上している。BNPパリバ証券やバークレイズ証券が今年後半の引き上げを予想しているほか、JPモルガン証券はリスクシナリオとしてその可能性を指摘している。

  日銀は昨年9月に導入した長短金利操作付き量的・質的緩和の下で、操作目標をマネーの量から長期金利(10年物国債金利)と短期金利(日銀当座預金のうち政策金利残高に0.1%のマイナス金利を適用)に変更した。

過去の教訓

  富士通総研の早川英男エグゼクティブ・フェローは13日、都内で開かれた講演会で、「1ドル=110円台が維持され、原油も1バレル=50ドル程度が維持されると、17年度後半の物価上昇率は1%くらいまで上がってくる可能性はある」と指摘。物価上昇率が「1%に乗ってきた時に10年物長期金利のターゲットが本当に0%で良いのか、必ず議論になるはずだ」と述べた。

  一方、20日公表された06年7月から12月の金融政策決定会合の議事録では、物価上昇率が0%近辺だったにもかかわらず、超低金利が長く続くリスクを懸念し、同年3月の量的緩和の解除に続き利上げ路線を進もうとした過程が明らかになった。

  昨年12月会合の「主な意見」では、「大恐慌時のFRBの早過ぎた出口、日本の早過ぎたゼロ金利と量的緩和の解除などの経験を踏まえれば、2%の物価目標を達成するためには、相当の期間、現在の金利水準で長短金利操作付き量的・質的金融緩和を続けるべきである」との意見が紹介された。

  複数の関係者によると、仮に物価上昇率が1%に達しても、日銀は長期金利を0%程度に維持することに自信を示している。

  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、前日比0.005%低い0.045%で推移。ドル円相場は朝方には一時1ドル=112円53銭と昨年11月30日以来のドル安・円高水準を付けた。

GDP上方修正も

  日銀は30、31両日、金融政策決定会合を開き、四半期に一度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)を策定し、金融調節方針を議論する。複数の関係者によると、世界経済の改善や昨年12月の実質国内総生産(GDP)統計の見直しを受けて、実質GDP成長率の見通しの上方修正を検討する可能性がある。

  黒田東彦総裁は20日、スイスのダボスで、17年度は1.5%程度の成長を見込んでいると明らかにした。日銀が昨年11月に公表した前回展望リポートでは、同年度の見通しは1.3%だった。複数の関係者によると、コアCPI前年比は、前回1.5%上昇だった見通しをおおむね据え置くか、上方修正しても小幅にとどまる公算が大きい。

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