日本企業がインドで手荒な扱いを受けている。

  日本企業が行った幾つかの対インド投資が株主ではなく、むしろロンドンとシンガポールでの仲裁裁判に携わる法律専門家に富をもたらしている。安倍晋三首相とインドのモディ首相の「ブロマンス(深い絆)」とも称される親密な関係に多大な期待を寄せている向きが失望したとしても、もっともだ。

  NTTドコモが22億ドル(現行レートで約2500億円)を投じたインドのタタ・グループとの移動通信合弁、第一三共による46億ドル規模のランバクシー・ラボラトリーズ買収は2つの顕著な失敗例だ。出資から10年近くを経て、ドコモも第一三共も国際的な仲裁手続きを介した補償の申し立てで勝訴したが、いずれのケースも支払いが履行される兆しはない。

第一三共の株価推移
第一三共の株価推移
Photographer: Kuni Takahashi/Bloomberg via Getty Images

  ドコモの係争の方が解決が早いかもしれない。経営をめぐる対立で揺れるタタ・グループのかじ取りを創業家出身のラタン・タタ氏が再び担うことになり、同氏はドコモとの問題解決に熱心だと報じられているためだ。合弁株式を取得価格の50%か公正価値かのいずれかで買い戻すことができるとドコモに約束したのが同氏だ。

  第一三共の苦悩は、ランバクシーをシン兄弟から2008年に買い取った時に始まった。その後すぐにランバクシーが30以上の医薬品を製造している2工場を米当局が摘発し、データ偽造を理由のそのうち1工場の新製品の審査を停止した。昨年5月、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)はシン兄弟が事実の公表を怠ったとして損害賠償3億7600万ドルを第一三共に支払うよう命じた。

  だがシン兄弟はインドの法律の下ではSIACの判断は無効だと主張。すでに損失を被りインド市場から撤退した第一三共は、係争解決前にシン兄弟がインドの病院経営企業フォルティス・ヘルスケアの持ち株を売却しないように裁判所が命じることを望んでいる。インドの経済紙ミントは今月、米投資会社KKRが企業価値15億ドルのフォルティスをシン兄弟から買収する交渉をしていると伝えた。さらに第一三共によれば、同社が資金の返済を求め提訴しているシン兄弟の投資会社の1社がすでに存在していないことが判明したという。

インドの鉄道高速化

  こうした対立が長引けば長引くほど、インドの国内法は外国企業との商業的な係争を解決するのは不可能だという印象が強くなる。それに日本企業は、新興市場諸国で最も積極的に企業の合併・買収(M&A)に取り組んでいるというわけではない。日本企業によるブラジルとロシア、インド、中国でのM&Aは過去6年間でわずか合計250億ドル、インドはそのうち44億ドルにすぎない。対照的に米企業は昨年だけで51億ドルをインドに投じた。

日本の新興市場諸国向け投資の推移
日本の新興市場諸国向け投資の推移
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  安倍首相は対インド投資でそうした日本の消極的姿勢を転換し、インドの鉄道高速化で日本が大きな役割を担うことを望んでいる。長期にわたるインフラ計画の立案では、契約履行の尊重がより重要となるが、すでにインドの税制は地雷原だ。インドの合弁相手と国内法が受け入れ難い主張や判断をし続ける限りは、日本企業にどんなに意欲があろうとも、対インド投資が結局、失敗に終わってしまう恐れがある。
(アンディ・ムカジー)

(このコラムは必ずしもブルームバーグ・エル・ピーおよびその所有者の意見を反映するものではありません)

原題:Japan’s Raw Deal Shows India Needs to Cure Delhi Belly: Gadfly(抜粋)

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