トランプ米大統領は23日、米国が環太平洋連携協定(TPP)を離脱するための大統領令に署名し、自由貿易を尊重する数十年にわたる政策を転換させた。

  トランプ大統領は他の11カ国との通商協定であるTPPから離脱する大統領令に署名した後、「今われわれがとった行動は、米国の労働者にとってすばらしいことだ」と述べた。メキシコおよびカナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉開始の命令には署名していないが、NAFTAに関する行動については作業中だと、ホワイトハウスの当局者が匿名を条件に述べた。

  トランプ大統領は「これについてわれわれは長い間話してきた」と述べた。

  同大統領は選挙戦中からTPPやその他の通商協定に反対を表明しており、今回の大統領令は驚きではないものの、一部の共和党議員や米国の自由貿易重視の政策を基盤に事業を構築してきた企業の幹部らを動揺させた。トランプ大統領がTPPを範囲の狭い別の協定に置き換えるかどうかは不明だ。保護主義的な色彩を強めた政策が現代の経済に与える影響が懸念されている。

  カトー研究所で通商政策を研究するディレクター、ダン・イケンソン氏は「大統領が率先して保護主義を推進し、内向きの姿勢をこれほど明確に表明したことはかつてない」として、米国の通商政策は1934年以来、党派を超えて自由化と融和、国際主義に向かっていたと指摘した。

  TPP離脱を労働団体や一部の民主党議員、米たばこ会社は歓迎。一方、農家や牧場主の利害を代表する団体が失望を示したほか、共和党内からも反対の声が出た。ジョン・マケイン上院議員(共和、アリゾナ州)は米国がアジアで戦略的地位を捨て、中国に影響力拡大の機会を与えることに懸念を示し、「TPPからの撤退は間違った判断だ」とのコメントを発表した。

  全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は「TPPとNAFTAは長い間、やり玉にあげられてきたが、実際のところ外国貿易は米牛肉産業にとってうってつけのサクセスストーリーだった」とし、そうした通商協定がなければ業界は1日当たり40万ドル相当の売り上げを失うと指摘した。

  フット・ロッカーやウォルマートなどの小売業者、ナイキなどのブランドも、TPP離脱によって輸入関税節約の機会を失うと、ブルームバーグ・インテリジェンスのデータは示している。

  日本や米国、メキシコ、シンガポールなど12カ国の貿易を自由化するTPPは、オバマ前政権のアジア重視政策の柱だったが、民主党や一部の共和党議員の反対で批准の手続きに至ることはなかった。

  TPPの先行きは不透明になった。安倍晋三首相は昨年11月に、米国抜きのTPPは意味がなくなるだろうと発言している。ただ、ベトナムやオーストラリアなどは米国なしでも合意を順守する考えを示していた。

  NAFTAについてトランプ大統領は22日、カナダのトルドー首相、メキシコのペニャニエト大統領との会談で議論を開始するつもりだと語った。トランプ大統領はかねてNAFTAが米雇用喪失の原因だと論じているが、協定が発効して以降の米国の雇用状況にはほとんど変化がない。大統領は就任後に米国と国境を接する隣国と進んで協力していく姿勢も示した。  
  
  ホワイトハウス上級スタッフの就任式典の冒頭で、「NAFTAや移民、国境警備について再交渉を開始する。メキシコや米国、全ての関係者にとって非常に良い結果になると考えている。それがまさに極めて重要だ」とトランプ大統領は語った。

原題:Trump Revamps U.S. Trade Focus by Exiting Pacific Accord (1)
Trump Revamps U.S. Trade Focus in Pull Out of Pacific Deal (2)(抜粋)

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