トランプ米大統領は保護主義が米国の雇用を拡大すると主張、就任直後に環太平洋連携協定(TPP)から「撤退」し、北米自由貿易協定(NAFTA)の「再交渉にコミット」することをホワイトハウスのウェブサイトで公表した。しかし、米国での日本企業の活動を分析すると、自国での生産を増やせば米国での雇用が増えるという単純な話ではないことが分かる。

  他国との貿易不均衡を批判することで、米国の貿易赤字の一部を減らせるかもしれない。しかし、自由な貿易や投資活動を阻害することは、売り上げの最大化を目指すグローバルサプライチェーンを混乱させ、日本企業による米国での売り上げや雇用の減少につながるだろう。

  米国の主要貿易相手との貿易赤字額をみるとトランプ氏の主張は腑(ふ)に落ちる部分もある。米国の過去12カ月間の貿易赤字額は対中が64%、対日本、ドイツ、メキシコはそれぞれ12%前後を占め、4カ国の合計は総額とほぼ等しい。

  しかし、米国の特定国への貿易赤字額の増加が直ちに雇用の喪失につながるわけではない。トヨタ自動車など、グローバル活動する企業のビジネスに介入することで、むしろ米国内の雇用の減少につながるケースも想定される。

  実際、外国企業は米国での雇用創出に大きな役割を果たしている。米国経済分析局によると、民間雇用に占める外国企業の割合は2014年に5.2%。日本企業は約85万人を米国で雇用しているとみられ、14年に雇用者数を3万4000人増やし、国別では最大の増加数だ。

  外国企業は米国の輸出の26%、輸入の30.3%に関わっており、関税により貿易収支が改善しても貿易量が減れば、米国内の労働需要の低下につながる。トヨタの工場があるケンタッキー州やミシシッピー州では、トランプ氏が米大統領選で勝利しているが、保護主義の支持により雇用が失われる認識は薄いとみられる。

  米国工場で高品質な生産を行いメキシコや南米に輸出している場合、NAFTAの見直しは明らかに米国での雇用減少につながる。例えば、米国のインスタントヌードル市場で6割、メキシコで9割のシェアを握る「マルちゃん」を米国で生産する東洋水産の株価は、米大統領選後に日経平均株価が大幅に上昇する中で低迷している。

  米国が35%の関税を課した場合、価格上昇による自動車販売の減少の影響で米国の雇用が少なくとも3万1000人減少するとの米自動車調査センターの試算もある。15年のメキシコの対米乗用車輸出のうち40.3%は米国製の部品を用いており、売り上げ減少で営業だけでなく自動車部品工場の雇用が失われると見込んでいるためだ。

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