ブイ・テクノロジーは独自に開発した有機EL(OLED)ディスプレーの装置や部材をめぐり、3月までの契約締結を目指し中国メーカーと交渉中だ。製造プロセスの一括請負に成功すれば、500億円規模の売り上げが見込め、同社の収益水準は一気に高まる。

杉本重人社長
杉本重人社長
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  杉本重人社長はブルームバーグのインタビューで、「将来的にスマートフォンのスクリーンは全部有機ELに変わる」と事業の有望性に言及。有機ELパネルの製造は韓国のサムスン電子が先行しているが、追撃する中国では地方都市を中心に新たに有機EL開発に乗り出す企業が増えており、3月までに1社から発注を受ける計画で現在交渉していることを明らかにした。「新しい会社は当社のような新しい技術に興味がある」とし、「装置だけでなく、部品と技術、ノウハウも同時に提供したい」と話す。

  有機ELパネルは現在主流の液晶ディスプレーと比べ薄く、鮮やかな色彩に特徴があり、米アップルも「iPhone(アイフォーン)」の次世代機種への採用を検討している。ただし、生産行程が難しく、供給体制が十分に整っていないのが実情だ。Vテクノが開発した有機EL材料の基板蒸着時に用いる「高精細蒸着マスク(ファイン・ハイブリッド・マスク、FHM)」は、従来製品より蒸着性が高い上、軽量化に成功。この特性から、従来は水平に設置してきたマスクを装置に垂直に置くことができ、省スペース化につながる。

  杉本社長は、有機ELの普及には「第2、第3の会社が出てこないとだめだ」とし、面倒な生産工程でも「苦労しないマスクを作った。最初から精度が高いため、ノウハウの蓄積がなくても有機ELを作ることができる」と自社製品の優位性をアピールする。

  スマホのスクリーン装置市場では、中国の京東方科技集団(BOEテクノロジー・グループ)が15%のシェアを持ち、サムスンに次いで世界2位。中国企業では天馬微電子も5位と、存在感が増している。Vテクノでは大手メーカーに限らず、幅広い企業に技術を提案中だ。東海東京調査センターの石野雅彦アナリストは、「中国では地方政府が補助金を出すケースもあり、ビジネスチャンスはある。技術ポテンシャルは高く、中国企業と交渉が締結できれば、会社の規模を変えるものになる」との見方を示した。

Vテクノの局所レーザーアニール装置
Vテクノの局所レーザーアニール装置
Source: V-Technology Co.

  Vテクノは昨年6月に公表した中期経営計画で、最終年度となる2019年3月期の売上高900億円、営業利益140億円の目標を掲げている。17年3月期の営業利益計画(前期比55%増の40億円)と比べると3.5倍。同計画には有機EL関連装置の製造ライン一括の売り上げ計画は含まれていない。目標達成への根幹を担うのは、現時点で主力の液晶ディスプレーの製造、検査装置だ。サムスン電子など大手メーカーに供給しているほか、中国でも液晶パネルメーカーなどからの大口受注が続く。杉本社長は、「設備投資が非常にあり、3年間は全く問題ない」とみている。

米ヘッジファンドも保有株主上位に

  東京オリンピック・パラリンピックが開かれる20年度の全社売上高は「1000億円を超えさせる」と杉本氏。現在交渉中の有機ELをめぐる中国企業との契約に成功し、開発業務を請け負うことができれば、「一気に500億円の売り上げも見込める。会社の規模が倍になる」と言う。

2016年度のTOPIX採用銘柄のパフォーマンス
2016年度のTOPIX採用銘柄のパフォーマンス
Bloomberg Data

  Vテクノ株は16年に2.8倍上昇、時価総額500億円以上の製造業銘柄では上昇率トップとなり、TOPIXの1.9%下落を大きくアウトパフォームした。ブルームバーグ・データによると、米国で著名なヘッジファンドの1つ、ルネサンス・テクノロジーズも保有株主上位に名を連ねる。杉本社長は、「まだまだ高くなっても良い。昔は、小さくても技術的に素晴らしい会社を目指していたが、今は規模でも世界一になるべきと思っている」と述べた。

  Vテクノ株は23日の取引で一時20%高の1万6050円と急騰し、06年6月以来、10年7カ月ぶりの高値を付けた。同日のTOPIXは1.2%安と反落。

  杉本社長は測量機器会社の測機舎(現在はトプコン傘下のソキア)出身で、工学博士の肩書きも持つ技術者。1997年に同僚4人でVテクノを立ち上げ、2000年に東証マザーズ市場に新規株式公開(IPO)し、11年に東証1部企業になった。13年にオムロンレーザーフロントからFPD・半導体業界向リペア装置事業を取得したほか、15年には露光装置メーカーのNSKテクノロジーを100%子会社化するなど買収で事業領域を拡大。杉本社長は、「みんな違う会社の出身で、以前の競争相手もいる。寄せ集め集団だからイノベーションが起きやすい」と自社を分析している。

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