トランプ次期米大統領の発言は的を射ているかもしれない。ドルは実際に強い。米連邦準備制度理事会(FRB)算出のドル指数によれば、40年平均を約7%上回っている。

  強いドルは必ずしも経済にとってマイナスではないが、トランプ氏が描く米製造業再生を妨げるかもしれない。同氏が米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューでドルは「強過ぎる」と発言し、米企業の競争力を考えると「致命傷だ」と語る前に、ドルは既に2014年半ば以降22%上昇し、米貿易赤字を膨らませてきた。

  トランプ次期政権がドル安を望むとしたら、何ができるだろうか。以下に5つの選択肢を列挙する。

トランプ氏
トランプ氏
Photographer: Kevin Dietsch/Pool via Bloomberg

1.口先介入

  これまでのところトランプ氏の発言は効いたが、為替に焦点を絞る具体的な政策がない場合、政府や中央銀行の当局者の発言にトレーダーが耳を傾けなくなるのは歴史が証明している。

2. 協調介入

  米財務省は世界の中央銀行と過去30年に協調介入を行った実績があり、最後の実行は11年。ただ、協調介入は近年廃れてきた。1日当たり5兆ドル前後が取引される巨大市場を動かす効果が本当にあるのかアナリストらは確信が持てず、効果があったとしても介入後の不胎化で長続きしないなどの見方がある。

3. 単独介入

  同盟国が支持しない単独介入は難しい。13年の先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の声明は、「為替レートは市場において決定されるべきこと」とし、「為替レートを目標にはしないことを再確認する」と表明した。

  ただし、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済および金融の安定に対して悪影響を与え得ることに合意している」との文言もあり、トランプ次期政権は同様の声明を出して介入を正当化することが可能かもしれない。

  ノムラ・インターナショナルのシニアエコノミスト、チャールズ・サンタルノー氏はトランプ政権が単独でドル押し下げ介入を実施するとは考えていないが、ドルは急速に上昇してきたとして、「そのような大きく幅広い相場上昇に米経済が適応するのは難しいと政権は常に主張できる」と指摘する。

  単独介入には、全面的な通貨戦争に発展するリスクがある。米財務省が実施を決断した場合、他国も追随が許されるかもしれない。

4. ソブリンファンドの創設

  ノムラからは、ソブリンファンドの創設というちょっと変わった選択肢が浮上している。新興市場国やノルウェーなどの先進国でもソブリンファンドを通じて外国の国債や不動産など国外資産に投資している。米国が追随できない理由はない。

5. 外為市場以外への介入

  最終的にトランプ氏は、結果としてドル安につながる保護主義に単純に集中するかもしれない。同氏は貿易協定の再交渉や中国やメキシコからの輸入に高関税を課すと公約済み。これでドル相場は揺らぎ、為替レートは米輸出企業にとってもっと有利な水準になる可能性がある。

原題:Trump’s Options for Weakening Dollar Extend Far Beyond Tweeting(抜粋)

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