16日の東京外国為替市場では円が全面高。英国の欧州連合(EU)からの強硬離脱を懸念してリスク回避の動きが強まったことが背景で、ドル・円相場は1ドル=114円を割り込み、昨年12月以来の安値を付けた。

  午後3時57分現在のドル・円相場は前週末比0.6%安の113円79銭。早朝のポンド急落でいったん114円67銭までドル高に振れた後は、対ポンドでの円買いが波及し、114円10銭付近までドル安・円高が進行。その後、しばらく一進一退の展開が続いたが、徐々に円買いが優勢となり、欧州市場に向けては113円63銭と昨年12月8日以来の水準まで円高が進んだ。

  先週末に1ポンド=139円台だったポンド・円相場は、早朝に昨年11月21日以来となる136円台後半まで急落。137円台後半まで反発した後は伸び悩み、午後には再び137円を割り込んだ。

  ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店の鈴木恭輔為替資金営業部長は、ドル・円の下落について、単体というよりも「英国発のリスクオフ的な材料に対するクロス円(ドル以外の通貨の対円相場)の軟調が重しになっているのだろう」と説明。「ひとまずは欧州勢が英国材料にどのように反応するかが目先の鍵になりそう」と語った。

  英紙サンデー・タイムズは15日、メイ英首相が移民流入抑制などのためにEU単一市場から撤退する計画を示すと伝えた。メイ首相は移民制限やEU以外の国との自由貿易協定を可能にするため、EUの関税同盟からの脱退を準備する方針という。

  この報道を受け、ポンドは主要通貨全てに対して大幅下落。対ドルでは早朝に一時1ポンド=1.1986ドルと昨年10月7日のフラッシュクラッシュ以来となる1.2ドル台割れの水準に急落した。その後、英政府がメイ首相のEU離脱に関する17日の演説が市場で一段の混乱を引き起こすと予想される中で、投資家を安心させるための計画を策定しているとの関係者の話が伝わり、ポンド売りは一服。ただ、1.2055ドルまで戻した後は伸び悩んだ。  

  しんきんアセットマネジメントの加藤純シニアファンドマネージャーは、中期的には財政の規律がなくなるため、財政も出せるし独自の政策がとれるので英国は復活してくるとみているが、単一市場のアクセスがなくなるということは短期的には厳しいと指摘。「今後各国と通商政策を結ぶにしても相当な時間がかかるので、ひとまずはポンド売りになる」とし、対ドルで10月安値(1.1841ドル)を下回る可能性があると語った。

  ハモンド英財務相が15日付の独紙ウェルト日曜版とのインタビューで、英国がEU離脱後に欧州単一市場へのアクセスを確保できなかった場合、競争力強化で「必要なことは何でもする」と述べた。一方、英紙タイムズは、トランプ次期米大統領は英国に「公平な」貿易協定を提案し、迅速に取りまとめたい意向だと述べたと、同氏とのインタビューを基に報じた。また、トランプ氏は独紙ビルトとのインタビューで、他のEU加盟国も英国に追随して離脱すると予想した。

  20日にトランプ氏の大統領就任式を控えて、市場では同氏の保護主義姿勢に対する警戒感も強まっている。トランプ氏はビルトとのインタビューで、BMWが計画する工場に言及し、メキシコで製造され米国に輸出されるドイツ車には35%の関税を課すと発言した。一方、先週末報じられた米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューでは、中国の為替・貿易慣行に改善に向けた進展が見られるまで、台湾の位置付けをめぐる米中の長年の合意にはコミットしないと述べた。就任初日に中国を為替操作国に認定することはしないと語った。

  16日の東京株式相場は下落。日経平均株価は一時200円以上下げる場面が見られた。
  
  外為どっとコム総研の神田卓也取締役調査部長は、「保護主義は最終的にはドル高志向にはなると思うが、保護主義的な発言が出ると短期的にはリスクオフの円高を誘発する可能性が高い」と指摘。「短いスパンで考えると就任演説にらみで、ドル・円は下値不安の方がどちらかというと強い」とし、先週12日の安値(113円76銭)を割り込めば、下げが加速する可能性があると話していた。

  ユーロ・円相場は先週末の1ユーロ=121円台後半から、週明け早朝に121円ちょうどまでユーロ売り・円買いが進行。その後121円台後半まで反発したが、午後には120円78銭と先月5日以来の水準までユーロ売り・円買いが進んだ。

  三菱東京UFJ銀行金融市場部為替グループの野本尚宏調査役は、「クロス円はポンド・円やユーロ・円以外でもチャート的に下向きの圧力がかかってきているため、ポンド売りでドルがしっかりとなっても、ドル・円に下向き圧力がかかる可能性もある」と説明。米国が祝日の中、目先は「17日のメイ英首相の演説に向けてポンド主導での動きには注意が必要」と述べた。

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