前財務官の山崎達雄・国際医療福祉大学特任教授は、ツィッターを駆使して米国の貿易赤字などに不満を表明しているトランプ次期米大統領が、為替相場について発言を控えていることは「リスペクトに値する」との見解を示した。

  山崎氏は12日、ブルームバーグのインタビューで、米大統領選後の円安ドル高について、「米国企業の利益に敏感なトランプ氏が内心では嫌だなと思っているに決まっている」とし、「トランプ氏が為替について何も言わないのはすごいことだ」と語った。

  トランプ氏は12日未明(日本時間)にニューヨークで開いた記者会見で「中国との貿易で年間で数千億ドルの損失を被っているのに加え、日本やメキシコとの間にも貿易不均衡が存在している」と、日本を名指しした。しかし、市場が注目していたドル高のけん制までは踏み込まなかった。

  昨年11月の米大統領選後、円は対ドルで約8%下落した。同氏は円安が進んでいた2015年には日本の為替操作についてコメントをしたこともあるが、足元の円安には沈黙を守っている。一方で、昨年12月には人民元の価値引き下げに対する懸念をツイッターに投稿していた。

  山崎氏はドル円相場について「ドルはベーシックに高い感じが続く」と予想。その上で、「多くの日本企業の社内想定レートは100円の前半だ。それが120円、125円になったところで、日本経済全体でみると深刻な問題が生じるレベルではない」とし、為替相場は安定していることが大事だと強調した。

  ドル=円相場はトランプ氏が12日の記者会見で経済財政政策の具体策に言及しなかったことから一時1ドル=113円と約1カ月ぶりの円高となり、足元では114円台で推移している。

中国への批判は「当たり前」

  トランプ氏の中国の通商政策に対する批判は「当たり前だ」と言う山崎氏は「一見市場ルールに従っているが、目に見えないところで不公正な貿易を正すんだと言っている。決して保護主義をやると言っているわけではない」とみる。日本も欧州連合(EU)も利害は共通しているとの見解を示した。

  一方で、トランプ氏が環太平洋連携協定(TPP)からの脱退を表明していることに対しては、「米国企業に競争力を戻し、米国を輸出基地にするような発想があるのであれば、マルチで高いレベルの通商基準を他の新興国にも守らせることが本当は大事だ」と述べ、多国間での通商ルールが必要との考えを示した。

米国経済の高成長に期待

  インフラ投資や減税などを柱としたトランプノミクスへの期待値は高まっている。経済協力開発機構(OECD)は昨年11月発表の半期経済見通しで、トランプ次期政権の経済財政政策によって米国の成長率が17年の2.3%から18年には3.0%に伸びると予想。同年の世界成長率予想は3.6%と11年以来の高成長を見込んでいる。

  政策の不確実性はあるものの、山崎氏はトランプ氏の経済政策が米国の成長自体を高めるとの予想は日本をはじめ「世界経済にも当然プラスだ。米国の成長率が高まれば、米国の輸入も増える。世界経済全体が拡大する」と期待感を示した。

  トランプ次期政権は輸出入を基準とした法人税の調整も検討しており、日本の輸出企業に一時的に影響を与える可能性もある。山崎氏は日米の「経済関係は同じ船に乗っている。通商問題については意見を言わなければならない部分もあるかと思うが、できるだけ協力してやっていった方が良い」と述べた。

尖閣への日米安保適用

  山崎氏が注目するのは上院外交委員会の公聴会でのレックス・ティラーソン氏の発言だ。国務長官に指名されたエクソンモービル前会長兼最高経営責任者(CEO)の同氏は日米安全保障条約を守る考えを示した上で、尖閣諸島が同条約の適用範囲だとする姿勢を示唆した。

   山崎氏は日本政府が求めていた安全保障上の重要方針を早々とティラーソン氏が明言したことで「日米関係は決まった」と評価。トランプ次期政権は「少なくとも中国に言うべきことは言う体制。ロシアに対してはプーチン大統領と関係改善の可能性を探ると言っている」ことから、安倍晋三政権と歩調が合うとの見方を示した。

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