企業の過重労働への批判が強まる中、総合電機メーカーの三菱電機が従業員に違法な時間外労働をさせたことが発覚した。電通の女性新入社員の自殺をきっかけに長時間労働が美徳とされてきた日本企業の価値観が変わりつつある中でまたも同様の事例が発生したことで、政府や企業では生産性向上を目指して時短への取り組みが加速しそうだ。

  厚生労働省神奈川労働局は10日、三菱電が情報技術総合研究所職員に労働基準法に基づく上限時間を超える違法な時間外労働を行わせたとして、同法違反の疑いで同社を横浜地検に書類送検した。昨年12月には国内最大の広告代理店、電通の女性新入社員の自殺をめぐって東京労働局が電通の強制捜査に乗り出し、同社と同社社員を労働基準法違反の疑いで書類送検していた。

  三菱電は声明で同研究所では労働時間を客観的に把握するシステムを導入していなかったとした上で、現在では全ての事業所でシステム導入が完了し、「適切な労働時間管理を徹底」するとした。電通の発表文では、自殺した高橋まつりさん(当時24)は業務量が増大して長時間労働の状態にあり、責任感や人間関係などが心理的ストレスになりそれが自殺の原因となった可能性は否定できないとの報告があったとした。石井直社長は1月に引責辞任する。

  厚労省の過労死等防止対策白書によると、仕事疲れなど勤務問題を原因・動機の一つとする自殺者は、2011年をピークに減ってはいるものの、15年には2159人に上った。一方、日本生産性本部によると、15年の労働生産性比較では日本は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のうち22位にとどまっていた。

  国内の労働力人口は今後減少が見込まれており、安倍晋三政権は働き方改革を最重要課題の一つに掲げている。菅義偉官房長官は11日、三菱電の問題について問われ、「今まさに働き方改革を政府内で有識者の皆さんを交えて検討中。年度内に取りまとめてできるだけ早く国会に提出をして、最大の鍵である働き方改革を実現したい」とコメントした。

プレミアムフライデー

  政府は経済界とタッグを組み、2月24日から「プレミアムフライデー」を実施する。毎月末の金曜日に仕事を早めに切り上げ、買い物や食事、小旅行を楽しんでもらうことで、停滞する個人消費の拡大とともに、長時間労働を是正し、働き方改革につなげることが狙いだ。

  法政大学経営大学院の藤村博之教授は、長時間労働問題の背景について、株主からの要求が多くなり、企業が人材を減らし過ぎて一人あたりの負担が増したことがあり、「電通や三菱電機以上に働かされている企業はある」と指摘。若い世代は長時間労働によいイメージを持っていないとし、「無理な仕事は無理、と言えなくてはならない。実際に企業もその方向に進んでいる」と述べた。

週休3日制導入検討も

  インターネット検索大手のヤフーでは従業員の生産性向上へ向けて週休3日制の導入の検討を始めた。ヤフー広報担当の八木田愛実氏によると、同社は昨年の本社移転にあわせて在宅勤務の日数を従来の月3回から5回に拡大するなど、改革を進めてきた。

  同社は今後、有休取得率の向上など、段階的に週休3日制を導入するかどうかを20年をめどに決めたいとしている。八木田氏は週休3日は働き方の選択肢の一つであり、ゴールではないとした上で、「『働く自由』を提供することで、従業員自身が最もパフォーマンスを発揮できるような選択をしてもらい、生産性を上げる」ことが狙いだと話した。

  ファミリーレストランチェーンを展開するすかいらーくは、働き方改革の一環として深夜営業を大幅に縮小する方針を打ち出した。午前2時から午前5時までの深夜時間帯に営業している987店のうち約8割の店舗で原則的に午前2時閉店、同7時開店として営業時間を短縮するという。同社は深夜の客数減少傾向を受けて13年に約600店の営業時間を平均2時間短縮したが、今回は営業上の理由ではなく従業員のワークライフバランス推進を目的としているという。

海外企業見て宗旨変え

   京都市に本社がある電子部品メーカー、日本電産も20年までに残業ゼロを目指して従業員の働き方改革に着手した。創業者の永守重信社長は1日16時間働き、元日の午前中しか休まない猛烈な働きぶりで知られ、永守氏によれば、かつては「死ぬまで働けとか朝までやれと言っていた会社」という。

   2000年代以降買収を進めた海外企業がゆとりのある労働環境でも好業績を上げているのを見て、日本企業の働き方に疑問を感じるようになり考え方を変えたという。仕事の能率向上のためのシステムなどに約100億円を投資するほか、自らを含めて必要な仕事と不必要な仕事の見極めを進めてきた。「日本の会社は長い間残業が当たり前だった。もういっぺん見直したらそんなことまったく必要ない」ことがわかったと永守社長は6日の記者会見で述べた。

  永守社長は、改革の目的はあくまで生産性の向上であり、労働時間の短縮にばかり関心が向くことはよくないとし、政府には生産性の向上を最優先に「日本を先進国並みの生産性の国にする」ぐらいの気概を求めたいと話した。

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