リサ・アラゴンさんが断っても断っても、ヘッドハンターは引き下がらなかった。高めの給料や4週間分の有給休暇を含む好条件での転職の誘いを1カ月に5回も拒否した。

  アラゴンさんが働いているのはシリコンバレーでもウォール街でもない。全く畑違いの米ハンバーガーチェーンだ。アラゴンさんは現在、ウェンディーズのニューメキシコ州アルバカーキにある店舗でマネジャーをしている。20年の職業人生で、ここまで積極的にヘッドハンティングされたことはない。彼女を引き抜こうとしたのは長距離ドライバー向けにレストランや休憩施設を展開するパイロット・フライング・Jのリクルーターだった。

ウェンディーズの店舗
ウェンディーズの店舗
Photographer: Matthew Staver/Bloomberg News

  「リクルーターには『今の職場に満足している』と説明したわ」と話すアラゴンさん(41)は、今の職場での四半期ボーナスやトレーナーとしての追加報酬を楽しみにしている。「今は職を変わる必要がないから」と述べた。

  米国の昨年12月の失業率は4.7%と、9年ぶり低水準に近かった。労働市場が逼迫(ひっぱく)し、レストラン同士が労働者を奪い合っている。一般社員が人材紹介のボーナスや無料の食事、有休を獲得している。議会が動かなくても、従業員の候補者不足で最低賃金は引き上げられるかもしれない。

  こうした傾向は、景気が回復しても置いてきぼりにされたと感じる多数の低技能労働者には朗報だが、企業や顧客にとってはそうではないかもしれない。レストラン側は値上げか利益率低下を迫られるし、サービスが低下した例もあるからだ。新規労働者確保に必死の米ファストフード業界は、労働者不足の実態を示す先行指標になっているほどだ。

  アラゴンさんの上司はあらゆる策を講じて従業員を引き留めようとしている。フロリダとニューメキシコ、テキサスの3州でウェンディーズ177店舗を展開するエディー・ロドリゲス氏は過去1年に平均時給を1ドル近く引き上げて9.05ドルとしたほか、人材を見つけた社員に最大250ドルのボーナス支給を明らかにした。就業時間をもっと柔軟にし、自らヘッドハンターを使ってフロリダ州ポンパノビーチにあるコーポレートオフィスのスタッフを確保。社員一人一人に気を配ることも大事だと強調した。

  フリン・レストラン・グループのゲレッグ・フリン最高経営責任者(CEO) も「逸材を引き付けて引き留めるのは、これまでにないほど大変になっている」と語った。

  マクドナルド3店舗を抱えるテリー・スミス氏は、無料の食事や有休といったご褒美の積み重ねで150ー160人のスタッフを維持できていると語る。店舗には毎日通い、社員の名前をきちんと覚えるようにするとも指摘。「社員を適切に扱い既得権を与えれば、彼らは残ってくれる」と付け加えた。

原題:Headhunters Throwing Cash at Workers Who Can Flip Burgers (1)(抜粋)

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