米国内の雇用確保を掲げて当選したトランプ次期大統領の批判の矛先が日本の自動車業界にも向かってきた。メキシコ工場建設を計画するトヨタ自動車に高関税をかけることも辞さない考えを示した。

  トランプ氏は5日、ツイッターへの投稿で「トヨタ自動車は米国向けのカローラを生産する工場をメキシコのバハに新設すると言っている。とんでもない!米国に工場を建設しろ、さもなければ高い関税を支払え」とコメントした。

トランプ次期米大統領(12月14日)
トランプ次期米大統領(12月14日)
Photographer: Albin Lohr-Jones/Pool via Bloomberg

  トランプ氏のツイートの数時間前、トヨタの豊田章男社長は東京都内で開かれた賀詞交歓会でフォードのメキシコ工場計画撤回に関して質問を受けた際、自社のメキシコでの操業計画についてはトランプ氏の判断を考慮する意向を示し、米国での自動車生産増加は政治情勢と関係なくいつでも考えていると述べていた。

「トランプ政権と協力」

  トヨタによると、メキシコに新工場を開設しても、米国での生産や雇用が減ることはないという。同社広報担当のスコット・バジン氏はトランプ氏の批判を受け、「トヨタは消費者と自動車業界の最善の利益のためトランプ次期政権と協力することを待ち望んでいる」との立場を電子メールで表明した。

  トヨタの株価は6日の取引で続落。一時、昨年11月9日以来の日中下落率となる前日比3.1%安となった。他にメキシコに生産拠点を持つ日産自動車は同2.8%安、ホンダが同3.3%安、マツダが同4.2%まで下げた。メキシコに生産拠点を持たない富士重工業は一時、同1.9%安、スズキは同1.6%安となった。

トヨタ車
トヨタ車
Photographer: Dado Galdieri/Bloomberg

  トヨタは既に米ミシシッピ州の工場でカローラを組み立てており、2015年初め時点で累計50万台余りを生産した。同社はメキシコでカローラ工場を建設する計画だが、新工場の建設予定地はグアナフアト州アパセオエルグランデ。同社は米国との国境沿いにあるメキシコのバハカリフォルニア州ティファナに工場を持っており、ピックアップトラック「タコマ」を生産している。

GM、フォード

  トランプ氏の自動車業界批判は、人件費の低い国に長年にわたり生産拠点を移してきた米製造業を再生させる公約に沿った動き。同氏は今週、ゼネラル・モーターズ(GM)がメキシコで「クルーズ」の一部車種を生産していることをやり玉に挙げていた。フォード・モーターは同氏から数カ月にわたって批判されていた16億ドル(約1850億円)規模のメキシコ工場新設計画を撤回した。

  ミシガン・マニュファクチャリング・テクノロジー・センターのアナリスト、ダン・ルリア氏は「トランプ氏のツイートは、自動車メーカーにメキシコでの生産増強を慎重に考えさせる上で役立っている」と述べた。SBI証券の遠藤功治アナリストは、トヨタがメキシコにカローラ工場を建設しても、世界の自動車大手の中では最もメキシコ依存度が低いと指摘。実質的な収益影響はほとんどないが、プロパガンダとしてトヨタの名前が使われたのだろうと電話取材で述べた。

「変えるつもりない」

  トランプ氏の発言を受けて、ホンダ広報担当の建部輝彦氏は「メキシコの工場は既に立っているもののみで建設中のものはない。関税が極端に高くなるようなことがあれば変わる可能性はあるが、今のところ大きな方向として変えるつもりはない」。マツダ広報担当の平英樹氏は「工場を建設する際は長期的な視点で考えないといけない。メキシコ工場の重要性は変わらない」とコメントした。

  日産自のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は5日、米ラスベガスでトランプ氏の「米国第一」のスタンスについて問題ないとコメント。「われわれは米国で極めて大きな市場を持っていると聞いている。貿易と雇用の両面での恩恵を相応に得たい」と述べ、「私は『国境を閉ざす』とは聞いていない」と語った。日産自はメキシコでの自動車生産首位。

保護主義への懸念

  富士重の吉永泰之社長は5日の都内での賀詞交歓会で、メキシコに生産拠点を持つ計画は今後もなく、トランプ氏の政策から受ける影響は「それほどない」と述べた。トランプ氏が大統領に選ばれた「根っこにある保護主義的な考え方やうねりの方が人類として心配。世界が良くない方向に行くし、日本も影響を受ける」と話した。

  6日付の共同通信によると、ソニーの平井一夫社長もトランプ氏のトヨタ批判に関連し、人、モノ、金や情報が自由な形で流れていくことを担保するよう各国のリーダーにメッセ―ジとして出していきたいと企業活動の自由を訴えた。

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