米連邦準備制度の当局者は何年間も話題にしてこなかった課題に直面するかもしれない。それは米景気の拡大ペースが予想を上回り、一段と急ピッチでの利上げを強いられる可能性だ。

  4日に公表された昨年12月13、14両日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、物価を中長期的に安定的に保つ失業率水準を「大幅に割り込む」ような労働市場の改善に、当局者が備えようとしている実態が示された。実際にそうなれば、インフレ抑制のため「現在予想しているよりも速いペースでフェデラルファンド(FF)金利を引き上げる」よう、当局者は迫られるかもしれないという。

  議事録で名指しされることはなかったものの、FOMC参加者が想定する急成長シナリオに大きな影響を及ぼしているのはトランプ次期米大統領自身であり、それに加えて同氏が掲げる税制改革案および財政面の景気刺激策だ。議事録によれば、「今後数年間に一段と拡張的な財政政策が講じられると見込まれる結果、各自の経済成長予測への上振れリスクが高まった」との考えを参加者のほぼ全員が示唆した。

  それでも、次の利上げ時期がいつになるかについて、直接的な手掛かりはほとんど示されていない。12月のFOMCでは1年ぶりの利上げを決めるとともに、2017年中に予想する利上げ回数を3回と従来の2回から引き上げて、インフレ抑制のためにこれまでよりも速いペースの利上げに転換する可能性を示唆した。

詳細不明

  MFSインベストメント・マネジメントのチーフエコノミスト、エリック・ワイズマン氏(ボストン在勤)は「トランプ次期政権が講じるであろう財政面の刺激策が、成長とインフレに割合早期にプラスの影響を及ぼすとの確信が若干強まった」と指摘。「現時点では詳細が全く分からないため、これは意外だ」と語った。

  労働市場に残されたスラック(たるみ)の解消が進むの伴い、当局者はインフレ動向を評価する必要がある。 当局者は、労働市場の需給均衡を中長期的に保つ完全雇用状態の失業率を4.8%と推計。FOMC参加者が12月に示した最新経済予測の中央値によると、17年には実質国内総生産(GDP)の伸び率が2.1%と見込まれる中で、失業率は10-12月(第4四半期)に4.5%に改善するとされる。11月の失業率は4.6%だった。

  ソシエテ・ジェネラルの米国担当シニアエコノミスト、オメイア・シャリフ氏(ニューヨーク在勤)は「労働市場の需給逼迫(ひっぱく)が平均時給の上昇につながるなら、米金融当局が金利の道筋をどう見るかに一層大きな影響を及ぼすことになる」とコメント。「17年にはこちらの方が、財政政策策がどうなって成長とインフレに最終的にどのように影響するかよりも、最優先に考慮される対象となるだろう」との考えを示した。

オーバーシュート歓迎

  インフレの多少のオーバーシュートは当局にとって歓迎すべきものだろう。FOMCがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数は11月が前年同月比1.4%上昇にとどまり、上昇率は4年7カ月連続で当局目標の2%を下回った。

  議事録はこの点に関し、「インフレ率がFOMCの目標とする2%を引き続き割り込んでいる中でインフレの下振れリスクは残っており、中長期的に正常とされる失業率をやや下回るようになればインフレ率を2%に回帰させるのに役立つかもしれない」と記している。

  BNPパリバの米国担当シニアエコノミスト、ローラ・ロスナー氏(ニューヨーク在勤)は「当局者は賃金とインフレの動向を見守ることになるだろう」と話した。

  議事録が発したもう一つの主要なメッセージは、当局者が極めて不確実な世界に直面している事実だ。トランプ次期政権が掲げる財政政策が法律として成立する時期や、経済がそれにどう反応するか、刺激策の規模などはいずれも当局者には分からない。またドル高が進行すればインフレを抑制するとともに、輸出の伸び悩みによって成長にブレーキをかける恐れがある。

  議事録は「こうした政策をめぐる不確実性の高まりによって、FF金利の想定される道筋について一般の人々に伝えるのが一層難しくなると、FOMC参加者の多くが強調した」としている。

  BNPのロスナー氏は3月の追加利上げの公算は小さいとみる。トランプ次期大統領がどのような政策を推進し、議会が何を支持するかほとんど分からず、当局が漸進的な政策運営のアプローチを放棄する理由がないためだ。同氏は「ここで急ぐことはない」とし、「当局者は不確実性が一部解消されるのを待たねばならないだろう」と論じた。

原題:Fed Officials Grapple With a Welcome New Problem: Faster Growth(抜粋)

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