三菱UFJフィナンシャル・グループは、世界的な投資銀行に並ぶボンドハウスを目指し、米債券業務を強化している。不動産担保証券のトレーディングとハイイールド債引き受けの2チームを新設するなど業容を拡大し、みずほフィナンシャルグループの先行を許した世界最大の社債市場で追い上げを狙う。

  海外証券業務の責任者、ジェフ・コーリー氏は取材に対し、業容拡大のための採用は続けると述べ、案件獲得に向け顧客への営業活動強化に力を入れる考えを明らかにした。米投資適格社債の引き受けでは10位内を目指し、「フィクストインカムのパワーハウスになりたい」と話した。

  日本銀行の超低金利政策の下で、邦銀は本業の国内融資業務の収益が低迷。収益源の多様化に向け3メガグループは海外事業の拡大に動いている。三菱UFJは2013年にタイ大手のアユタヤ銀行を買収したほか、直接金融が盛んな米国では社債引き受けなど投資銀行業務にも力を入れている。

  中でも米国の投資適格社債は市場規模が日本の10倍あり、3メガグループは関連業務を強化。ブルームバーグのデータによると、16年の同社債の引き受けランキングでみずほは10位、三菱UFJは14位、三井住友は17位とすべて順位を上げた。3グループの引受額合計は前年比44%増の900億ドル超(約10兆6000億円)だった。

  米MUFGユニオンバンクを傘下に持つ三菱UFJはかつて、邦銀引き受けランキングで常にトップだったが、英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)の北米ローン事業を買収したみずほに15年以降、首位を譲っている。コーリー氏は「価格、エグゼキューションの両方で100%戦える自信がなければ土俵に上がらない」と強調。「われわれの重要な目標はマーケットシェア、市場での存在感、顧客との関係のすべてを高めることだ」と述べた。

  規制強化や低金利を背景にRBSや米モルガン・スタンレーなど海外金融機関は債券トレーダーの人員を削減しており、米資産運用会社ルーミス・セイレスのダン・ファス副会長は、「三菱UFJにとってはまたとないタイミングだ」と指摘。「ウォール街で真の債券パワーハウスになるための市場環境は整っている」と述べた。

米での制約も

  三菱UFJの米債券資本市場部門とクレジット・トレーディング部門には昨年11月時点で86人が在籍。米シティグループ出身のコーリー氏が加入した14年当時と比べて16%の人員増となっている。16年には米ゴールドマン・サックス・グループ出身のグラント・モイヤー氏をレバレッジド・ファイナンス・チーム責任者として採用した。

  ただ、三菱UFJはモルガン・スタンレーに出資している関係で、米企業の一部に対する債券引き受け業務が制限されている。両社は、日本では証券業務を2つの合弁会社に統合。海外では貸出業務などで協力関係にあるものの、基本的には別々に運営している。

  三菱UFJのコーリー氏は、米国での両社の業務すみ分けについて「衝突しないようにやっており、結果としてかなりスムーズに機能している」と述べた。モルガン・スタンレー広報担当のメリー・クレア氏は、コメントを控えた。

  米投資銀行キーフ・ブルイエット・アンド・ウッズのアナリスト、デービッド・スレッドゴールド氏は「顧客は証券会社に対し、グローバルであること、世界のどの主要な市場でもサービスを提供してくれることを求める」と指摘。「結果として、両社が同じ案件で提案していたということもありうるだろうが、誰も不愉快にならないように配慮する必要がある」と述べた。

  ブルームバーグのデータによると、年初来の米投資適格社債の発行額は計557億ドル(約6兆5000億円)と前年同期の3.4倍となり、ロケットスタートを切った。ただ、ブルームバーグのまとめによると、年間発行額は前年比10ー20%減の1兆ドル(約116兆円)超となる見通し。企業の合併・買収(M&A)案件の減少や米利上げによるコスト上昇、トランプ次期政権の政策をめぐる不透明感などが背景にある。発行額は11年以降、6年連続で増加していた。

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