オバマ政権は29日、2016年の米大統領選への干渉を狙ったサイバー攻撃への対抗措置として、ロシアに対する制裁を発動した。ロシアの情報機関やその関係者が対象で、米国から情報部員35人を追放する。ロシアがハッキングに関与した証拠を盛り込んだ報告書も公表した。

  オバマ大統領は声明で、「全ての米国民はロシアの行動を警戒すべきだ。データを盗難して暴露する活動は、ロシア政府の最も高いレベルによる指示以外にあり得ない」と述べた。

オバマ大統領
オバマ大統領
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  トランプ次期米大統領はサイバー攻撃にロシアが関与しているとの指摘について否定的な見解を示してきたが、この姿勢を転換する可能性を示唆した。トランプ氏は短い声明で「わが国がより大きくより良いことへ向かうべき時だ」と述べた上で、「この状況の事実関係について最新情報を得るため」情報当局者に来週会うことを明らかにした。

  サイバー攻撃への関与を否定するロシア政府は、今回の米国の制裁に対する対抗措置を30日に発表する。

  トランプ氏はロシアのプーチン政権との関係改善を目指す考えを表明しており、米大統領選でトランプ氏と争ったヒラリー・クリントン候補に打撃を与える目的でロシアが民主党全国委員会と同党関係者の電子メール暴露に関与したとされる米情報機関の結論を一蹴してきた。

  ロシアのペスコフ大統領報道官は米政府の制裁発表後の電話会見で、「現政権によるこれら行動に2つの目的があると考える。既にどん底にあるロシアと米国の関係を完全に破壊し、米国の次期政権と新大統領の外交政策プランを損なうことだ」とコメントした。

  ペスコフ氏はさらに、「今回の決定はオバマ大統領が下したものであり、3週間後にトランプ氏が国家元首となるという事実が出発点だ。われわれは当然このことを考慮に入れる」と述べた。

米外交官に「容認し難い嫌がらせ」

  ホワイトハウス高官は記者団に対し、次期政権が今回の制裁措置を無効にすることは可能だが、ロシアの情報部員が米国に戻り、欧州と米国の政治に干渉することを容認する立場に置かれることをトランプ氏は避けたいだろうと指摘。ロシアがあらゆるレベルの選挙への干渉を試みる兆候を米当局はつかんでいると説明した。匿名を条件に語った。

  連邦捜査局(FBI)と国土安全保障省は米政府の対応の一環として、サイバー攻撃にロシアの軍・文民情報機関が関与していたことを証明し、同国の最高機密であるハッキング組織の一部を暴くため技術的な証拠を盛り込んだ報告書を公表した。

  米財務省が発表した制裁の対象には、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)とその責任者ら、旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の後身機関であるロシア連邦保安庁(FSB)などが含まれる。米国のサイバーセキュリティー専門家は民主党全国委員会や同党幹部を狙ったハッキングにGRUが関与していたと分析している。

  追放処分にしたのはロシアの情報部員だとオバマ大統領は説明。米当局はメリーランド州とニューヨークにある「情報活動を目的とした」ロシアの2施設を閉鎖したことも明らかにした。オバマ氏はハッキングに加え、モスクワ駐在の米外交官が過去1年間、ロシアの保安局や警察から「容認し難いレベルの嫌がらせ」を受けたことも指摘した。

  共和党のライアン下院議長は「オバマ政権によるこの日の行動は遅きに失したとはいえ、8年間の対ロ政策の失敗を終わらせる適切な方法だ」との声明を発表。同党のマコネル上院院内総務も、ロシアの情報機関に対する制裁は「良い最初の一歩だ」と評価。ハッキングに関する議会の調査を支持する姿勢を示した。

  同党のマケイン上院議員とグラム上院議員は、今回の制裁は「ロシアにとって小さい代償だ」と指摘。より厳しい制裁に向けた議会の取り組みを主導する考えを示した。

原題:U.S. Strikes Back at Russia Over Interference With 2016 Election(抜粋)

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