2020年以降の地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」の採択から1年。日本の経済界からは、世界の取り組みに立ち遅れる危機感や自ら掲げる温室効果ガス削減目標の達成に向けた努力が足りないと懸念する声が上がっている。

  経済同友会の副代表幹事で、パリ協定に合意した15年度には同会の環境・資源エネルギー委員会委員長を務めた朝田照男氏(丸紅会長)は、合意後に国内の取り組み姿勢に変化は見られず、日本は諸外国に比べて気候変動問題の解決に向けた取り組みが遅れていると指摘する。温室効果ガスを排出しない「ゼロエミッション電源」である原子力と再生可能エネルギーの比率を、15年度の11%から30年度までに42-46%に引き上げる政府目標の達成についても「極めて困難な状況」と警鐘を鳴らした。

  15年に開催された気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)でパリ協定が採択され、今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることで合意。国連によると、10月5日時点で世界の温室効果ガス排出量の約59%に相当する74カ国が同協定を批准したことから、同74カ国を正式メンバーとして30日後の11月4日に発効。

  日本は11月8日に同協定を批准。批准が遅れたことで、11月15日から18日まで開かれたパリ協定の第1回締約国会合には正式参加できなかった。

  日本は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比26%減とする中期目標を掲げ、30年度に発電量に占める再生可能エネルギーの比率を22-24%(15年度は約10%)、原子力発電の比率を20-22%(同1.2%)に引き上げる構想を打ち出した。長期目標として50年までに80%の削減を掲げているが、その前段の中期目標の達成が危ぶまれている。

  朝田氏は、民間企業が再生可能エネルギーの利用拡大に取り組む上では、環境アセスメントや関連法などの規制、送電線の容量不足、既得権者との交渉など「あまりにも障害が大きすぎる」とし、政府の支援が必要だと話した。

原発審査の迅速化必要

  原発の活用については「国民合意を形成することが喫緊の課題」と指摘。福島第一原発事故後に安全基準が見直されたことで現在運転できている原発は2基にとどまっており、稼働率を向上させるために審査の迅速化など対策が必要だと述べた。

  日本はパリ協定の批准だけでなく、企業の取り組みでも諸外国に遅れをとっている。14年にスウェーデンの家具メーカーのイケアや保険サービスのスイス再保険などが中心に立ち上げた、事業で使う電力を再生可能エネルギーに変える運動「RE100」。現在、データセンターで大量のエネルギーを消費するアップルやグーグルに加え、インドや中国の企業など83社が参加するが、日本を拠点とする企業は1社も入っていない。

  朝田氏は、危機的状況の打開策として小回りの利く地方から変えていく方法を提案する。再生可能エネルギーの導入時に障害となっている許認可をワンストップで取得できる体制を地方自治体が整えるべきだとし、新たに誘致する企業の事業所や工場に再生可能エネルギー100%の電気を供給するエネルギーの地産地消構想を提唱する。

  地産地消によって送電線空き容量の問題も解消するほか、再生可能エネルギーを利用する発電設備の建設などで地方銀行には新たな資金需要も生まれる。同氏は、再生可能エネルギーと企業誘致をセットにしてやることで成長戦略にも地方創生にもつながるとし、実現に向けて取り組むべきだとの考えを示した。

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