今から3年前、米当局は住宅ローン担保証券の販売をめぐって米銀JPモルガン・チェースに記録的な制裁金の支払いを求めることを探っていた。いつもは規制の行き過ぎに批判的な同行のジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は当時、ワシントンへと飛び、ホルダー司法長官と会って当局との決着を目指した。

  ダイモンCEOはのちにブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「私はホルダー氏に対し、降参するために伺った。あなたは私の判事であり、陪審だ。私には選択肢がないと伝えたんだ」と明かした。面会から1カ月後、両者は130億ドル(現在の為替レートで約1兆5230億円)で当局の調査を決着させることで合意した。

  一方、JPモルガンでダイモン氏の部下だった英銀バークレイズのジェス・ステーリーCEOは、より好戦的なアプローチを取りつつある。同CEOが住宅ローン担保証券の販売をめぐり米当局との交渉で譲歩しないと決めたことで、米司法省はバークレイズの提訴に踏み切った。

バークレイズのジェス・ステーリー氏
バークレイズのジェス・ステーリー氏
Photographer: Jasper Juinen/Bloomberg

  バークレイズが10年ほど前、住宅バブルが崩壊する前に310億ドル相当の住宅ローン担保証券を販売していた間、再三にわたり投資家を欺いたと米当局は主張。これに対し、バークレイズは発表文で当局の主張に同意せず、「事実とかけ離れている」と論じた。

かみ合わない議論

  バークレイズと米当局との協議は当初からかみ合っていなかった。事情に詳しい関係者によると、米当局が最初に提示した額があまりにも高く、バークレイズ側はこれを交渉戦術の一環と判断したという。具体的な金額は明らかにしなかった。

  バークレイズの立場に詳しい別の関係者2人によれば、同行は住宅バブル時の住宅ローン担保証券の市場シェアに応じて制裁金を設定すべきだと主張。こうした理屈に基づくと、バークレイズはJPモルガンを大幅に下回る金額の支払いで済む。

  米政府はそのような計算で不正行為を測ることはないと反論。両者の交渉に詳しい複数の関係者のうち1人によると、米当局は要求額を約50億ドルまで下げたが、バークレイズは約20億ドルを超える額の支払いを拒否した。ステーリーCEOは両者の隔たりを埋めることは不可能と判断したという。

  ステーリーCEO(59)の脳裏にはかつてバークレイズでCEOを務め、2012年に銀行間金利の操作をめぐる当局の調査に協力したロバート・ダイアモンド氏の姿が浮かんだのかもしれない。同行は真っ先に調査を決着させ、その協力ぶりが評価されたが、ダイアモンド氏は世間の激しい非難を受けて結局辞任に追い込まれた。

BofAの前例

  米銀バンク・オブ・アメリカ(BofA)の住宅金融部門が欠陥のある住宅ローンを販売したとして米政府が起こしていた民事訴訟の控訴審で、米連邦高裁が5月に政府側はBofAの詐欺的意図を立証できなかったとして約13億ドルの支払いを命じた地裁判断を破棄したことも、バークレイズが法廷での勝機を見いだすきっかけとなった可能性がある。

  関係者のうち2人によると、バークレイズの弁護士らは米当局との調査決着交渉でこの判断を取り上げた。また、当局が問題があると認定した36の証券化商品のうち、31商品でバークレイズ自体が投資家になっていたとも主張したという。

原題:Why Barclays CEO Staley Opted for War When Dimon Chose Surrender(抜粋)

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