富士山など山々に囲まれた山梨県。国内で日照時間が最も長いという地の利を生かして同県などが建設した太陽光発電施設がある。大型の円盤を使った蓄電システムに新型のニッケル水素電池、電気で水から水素を製造する装置などさまざまな技術を持った企業などが集まり、この発電所で発電した電気を使った実証試験を進めている。

米倉山太陽光発電所
米倉山太陽光発電所
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  同県は2014年に出力1メガワット(1000キロワット)規模の発電設備を米倉山太陽光発電所(甲府市)に増設。さらに「燃料電池バレー」を目指して燃料電池関連の人材や投資を積極的に誘致しているが、再生可能エネルギーの導入を促すため蓄電技術全般の開発も後押ししている。

  同県企業局電気課の坂本正樹氏は、企業がここに拠点を設けた背景について「大規模な太陽光発電所を使って実証できるところはなかなかなく、実証用に貸し出す人もなかなかいない」と述べた。狙いは「研究をきっかけに大手メーカーや会社と、山梨県内の企業の交流が広がってサプライチェーンができること」と話す。

  ここで行われている実証試験の一つが、気象条件の変化で瞬間的に発電量が増加した時に、電気を巨大な円盤「フライホイール」の回転に変えてエネルギーを蓄える装置。発電量が減少した時には回転運動のエネルギーを電力に戻す仕組みだ。出力が不安定な太陽光など自然由来の発電設備と組み合わせ、出力の変化を滑らかにする。

  この事業に取り組んでいるのは鉄道総合技術研究所。リニアモーターカーに使われている技術を応用した超伝導磁気軸受を利用し、浮上しているために軸受部の摩擦がないフライホイール装置の研究開発を行っている。同研究所浮上式鉄道技術研究部の長嶋賢部長は、フライホイールの利点について、施設の規模に応じた容量の設定が容易にできるほか、「繰り返し充放電ができ劣化がなく、有害な廃棄物が出ない」と説明した。

改良型ニッケル水素電池

  11月には東京大学発ベンチャーのエクセルギー・パワー・システムズが、同発電所に急速充放電が可能な改良型ニッケル水素電池を使った蓄電システムを設置。発電量の変動に合せて素早く充放電を切り替えることで供給を調整するシステムで、従来型の電池と比べ耐久性や放熱性に優れていることが利点だ。

水素貯蔵タンク
水素貯蔵タンク
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  この発電所には太陽光発電の仕組みや次世代エネルギーに関する展示を行うPR施設も併設されており、消費する電力は屋上に設置した太陽光パネルや小水力発電に頼っている。余った電力は神戸製鋼傘下の神鋼環境ソリューションが開発した水を電気分解して水素を製造する装置を動かす。発生した水素を貯蔵し、電気が必要な時には燃料電池に水素を供給して発電してこの施設に供給する。

別なエネルギーに変換

  国内では太陽光など自然由来の発電設備の導入が進み、変動する出力をどうコントロールするかが課題となっている。そのため、電気を一時的に別な形のエネルギーに変えて蓄える技術に注目が集まっている。需要の少ない夜間に電力を使って高い場所に水を上げるという形で電力を位置エネルギーに変換する揚水発電は国内ですでに幅広く活用されている。新たに次世代電池やフライホイール、水素といった異なる種類の技術開発が進展しつつある。

  ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによると、日本は畜電設備の規模で米国と並んでおり、16年の847メガワット(84万7000キロワット)から24年までに7440メガワットに拡大すると試算されている。

  ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスのアリ・イザディ氏はいろいろな蓄電設備が実際に導入される際には、納入先の顧客がこれまでの実績のデータを必要とするため、こういった実証試験で得られるデータは意義のあるものと指摘する。

09年にエネファーム発売

  日本は09年に都市ガスなどから電気とお湯をつくる機器「エネファーム」の販売が開始されるなど家庭用燃料電池の先進国。水素の供給体制の整備を進めるなか、家庭向け燃料電池では既存の都市ガスインフラなどが活用されている。

  パナソニックは、将来は家庭向けに水素の供給体制が整うとの見通しのもと、神鋼環境ソリューションの装置で製造した純水素を使う燃料電池の実証試験に取り組んでいる。

  パナソニック新規・水素担当主幹の清水雄一氏は「ここは隔離された山梨県の特区的な所なのでいろいろな実験ができる。将来的にはガス給湯機のイメージで家の外の壁にぶら下げて使えるようなものになればいい」とし、そのためにはどう小型化、高効率化、高耐久化させていくかが重要だと話した。

  米倉山太陽光発電所には山梨県と東京電力ホールディングスが12年に建設した出力規模が10倍の10メガワット規模の太陽光発電設備があり、同社や東レ東光高岳が同県と共同でこの発電所で発電した電力を使った水素製造装置の技術開発や利用方法の実証を計画している。この事業は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として採択されている。

  

原題:Japan Seeks Silicon Valley for Energy Storage in Shadow of Fuji(抜粋)

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