米連邦公開市場委員会(FOMC)は1年前に利上げを始め、今年は4回の追加利上げを予測していたが、結局1回実施しただけで今年は終わろうとしている。これは実体経済の成長力衰退をある程度反映しているものの、その実体経済から程遠い株式市場の高騰は、利上げの出遅れで異常なバブルが膨張していることを示唆している。

  FOMCは来年について追加利上げ3回と予測しているが、景気拡大局面はさらに進行しており、いずれ景気の山から後退期へとつながっていく。FOMCは12月会合の声明で、「金融政策はなお緩和的であり、労働市場がさらに一定程度の強さを増す(some further strengthening)ように支援していく」と指摘。完全雇用が近づいたとの認識を示した。

  ここで注意すべきことは、完全雇用の達成は過去の景気拡大局面で景気の山とほぼ一致してきたことだ。この完全雇用を占う統計としては、フルタイム就業者数が優れている。1991年から10年間続いた史上最長の景気拡大期は、2001年3月に景気の山を形成し、フルタイム就業者数のピークとぴたりと一致した。FOMCはその2カ月前の同年1月3日に緊急会合を招集し、0.5ポイントの利下げを決定していた。

  2007年12月に始まったグレートリセッションの時には、フルタイム就業者数はその1カ月前の同年11月にピークアウトしていた。この時もその2カ月前の同年9月にFOMCは大幅利下げに踏み切っている。FOMCは過去2度の景気後退局面で、その2カ月前に異常を探知し、利下げに転換していたことになる。

  もっとも金融当局者は異常を探知しても、利下げで景気後退は避けられるとあくまで強気の姿勢を貫いていた。楽観過ぎたことが判明するまでにそれほど時間はかからなかった。翌2008年1月21日にFOMCは緊急会合を開き、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を一気に0.75ポイント引き下げ、さらにその1週間後の定例会合で0.5ポイントの追加利下げを決めたのである。2007年12月に景気の山を形成した米国経済は、グレートリセッションに突入していた。

  今回の景気拡大局面でのフルタイム就業者数は、今年8月に記録した1億2430万人でこれまでのピークを付けている。ピークは後になって振り返らなければ確認できないが、FOMCは完全雇用が近いとみており、かなり微妙な時期に差し掛かってきたことだけは間違いあるまい。

  このようにフルタイム就業者数は優れた景気一致指標だが、景気に先行するデータと合わせてチェックすることが肝要だ。それにはさらに細目を見ると新たな視点が得られる。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長がヒントを示してくれた。

  同議長は19日にボルティモア大学の卒業式で演説し、「大学での学位取得、さらに修士・博士号の取得は経済的な成功の鍵となる」と述べ、卒業生らを激励していた。

  確かに議長が指摘するように、大学以上の教育を受けた労働者の失業率は直近11月に2.3%にまで低下している。一方、高校を卒業していない高卒未満の失業率は11月に7.9%に上昇した。しかも同項目は今年7月の6.3%から、既に1.6ポイントも水準を上げている。

  前回の景気拡大局面では、高卒未満の労働者の失業率がボトムを付けた2006年10月から1年2カ月後に、米経済はグレートリセッションに突入した。今回の景気拡大局面で今年7月がボトムとなれば、来年後半にも景気後退入りというシナリオが描ける。

  さらに今回の景気拡大局面は低成長が続き、金利も異例の低水準に抑え込まれてきたことから資産バブルも異例の様相を呈している。今世紀の景気後退はいずれもバブル崩壊が複雑に絡んで傷口を広げており、煮詰まりつつある現在の景気・バブル循環の終着点に未曾有(みぞう)の混乱が生じることを想定しておくべきだろう。

  この状況でFOMCの当局者は来年、再来年とも毎年3回の利上げを想定。その先に長期中立金利水準しか見ていないのは楽観に過ぎるのではないか。FOMCは利上げの初動が遅れたばかりか、その後の追加利上げがのろいため、経済に異常な不均衡をもたらしている可能性が高い。
 
  その延長線上でいずれ決定する利下げも当然のことながら出遅れるため、景気の断崖からの落下はもはや避けることはできないだろう。しかもこの米経済の断崖は資産バブルによって未曾有のレベルまで引き上げられているため、そこからの落下は想像を絶するものになりそうだ。

 (【FRBウオッチ】の内容は記者個人の見解です) 

 
  
  

  

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