安倍晋三首相は26日で2012年12月の第2次政権発足から4周年を迎えた。経済最優先を掲げてきたが、日本を取り巻く国際情勢は来年1月20日に米大統領に就任するトランプ氏への対応、日ロ関係、東シナ海をめぐる中国との緊張、北朝鮮の核開発など課題が山積。17年は外交の年になるとの指摘が専門家から出ている。
 
  26、27の両日、米ハワイに滞在し、オバマ大統領との首脳会談を行うほか、太平洋戦争の開戦地、真珠湾を訪問する。政権発足からの4年間を総括する機会になるが、年が明ければトランプ新政権と正面から向き合うことになる。首相は11月17日に世界の首脳に先駆けて同氏とニューヨークで会談しているが、大統領就任後のトランプ氏との早期の日米首脳会談も模索している。

安倍首相
安倍首相
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  安倍首相は26日、経団連会合であいさつし、オバマ米大統領との4年間を振り返り「あらゆる面で日米関係を発展させ、アジア太平洋地域、世界の平和と繁栄のためにともに尽力してきた」と言明。

  真珠湾訪問をこれまでのオバマ大統領との取り組みの集大成と位置付け、「和解の大きな力を世界に示す歴史的な訪問になれば良い」と述べた。トランプ次期政権に対してはアジア太平洋連携協定(TPP)の意義を訴え続けるとあらためて語った。

手始めは対米関係

  米ワシントンの政治リスクコンサルタント会社、テネオ・インテリジェンスのトバイアス・ハリス氏は安倍首相にとって少なくとも17年の前半は外交政策が最優先課題となり、その手始めは日米関係がどのような状況にあるのかを明確にすることだとの見方を示した。

  トランプ氏は安倍首相と会談してから1週間足らずの同月21日に発表したビデオメッセージで、大統領就任初日に環太平洋連携協定(TPP)から撤退を表明すると宣言。大統領選期間中は同盟国に駐留米軍経費の負担増を要求したほか、日本の核武装にも言及している。日中が対立する尖閣諸島への対応など新政権の安全保障政策は不透明な部分も少なくない。

経済

  政府が21日に発表した12月の月例経済報告は景気の総括判断を1年9カ月ぶりに上方修正。12年12月の政権発足時は4.3%だった完全失業率は3.0%にまで改善するなど経済指標は改善している。SMBC日興証券の宮前耕也・日本担当シニアエコノミストは21日付のリポートで、17年の日本経済は「景気回復が続く可能性が高いと想定しており、金融政策・財政とも大きな動きはないだろう」と指摘した。

  安倍首相は20日、内外情勢調査会全国懇談会で約55分間にわたって講演したが、半分以上は日ロや日米関係など外交の話題に費やした。働き方改革にも触れた。日本銀行の金融政策決定会合も開かれていたが、日銀への言及はなかった。

  26日の経団連でのあいさつでは、「アベノミクスはまだ道半ば。デフレ脱却を確かなものにし、経済をしっかりとこれからも成長させていく」と述べ、「いただいた政治的な強い基盤の上にしっかりと結果を残していくことが私の責務だと思う。来年もそのために全力を尽くす」と語った。

解散

  永田町では安倍首相が12月に設定されたロシアのプーチン大統領との日ロ首脳会談で一定の成果を挙げた上で年明け解散に踏み切るのではとの情報が秋口に取り沙汰されたが、政治評論家の森田実氏は安倍政権の課題について「対米、対ロシアを中心とした外交になる。年明け解散の可能性は遠のいたと思う」と指摘する。

  日ロ首脳会談は共同経済活動を特別な制度の下で行うための交渉開始で合意したが、4島の帰属問題には踏み込まなかった。直後の17、18両日に共同通信が実施した世論調査では、日ロ首脳会談を「評価しない」は54.3%と過半数を占め、「評価する」は38.7%。内閣支持率は54.8%と11月より5.9ポイント下落した。

  安倍首相は26日の経団連の会合で、日ロ経済協力は双方にとってメリットがあると述べた上で、「来年の早い時期にロシアを訪問し、関係改善への機運を一層高めていきたい」と語った。

  自民党の二階俊博幹事長は16日の記者会見で、日ロ首脳会談の結果について「国民の皆さんの大半はがっかりしているということはわれわれも含めて心に刻んでおく必要がある」と指摘。20日の記者会見で「われわれは日ロ首脳会談と解散とを重ねて考えたことはありません」と語った。

  安倍首相は20日の講演で、この日開かれた自民党役員会で「来年はまた常在戦場、これを忘れずに緊張感を持ってもらいたい」と発言したことを明らかにしたものの、「解散の2文字は全く頭にない」と早期解散の可能性を否定した。

安定政権

  内閣官房参与の谷口智彦慶応大学大学院教授は、中国経済の減速やヨーロッパ政治の混乱などを挙げ、17年の主要な目標は政治的な安定を維持することだと指摘する。

  安倍首相は5月の先進7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を議長国として仕切った。その後、英国とイタリアで首相が交代したのに続き、米国のオバマ、フランスのオランド両大統領も相次いで任期を迎える。このままいけば安倍首相は来年5月下旬にイタリアで開かれるサミットでは、ドイツのメルケル首相に次ぐ長期政権の首脳として出席することになる。

  産経新聞によると、1月中旬にはオーストラリア、ベトナム、フィリピンなどを歴訪する予定。ロシアのプーチン大統領との早期の再会談も検討している。年内に予定していた日中韓首脳会談は延期したが、岸田文雄外相は来年のしかるべき時期に開催する方針を明らかにしている。 

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE