証券取引等監視委員会の委員長に就任した長谷川充弘氏は東芝の不正会計問題について、同社が水増し決算に基づき投資家から資金調達を行ってきたことは重大な問題であるとの見方を示した。その上で、刑事告発も視野に入れた調査は「現在進行形」で、新体制で適切に対処していく構えを見せた。

  長谷川新委員長(63)は20日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、東芝は「わが国を代表するグローバルな企業であり内外から名門企業として信頼されてきた」とし、投資家は「そのディスクロージャーが適切になされることを信頼」し、エクイティファイナンスなどに応じてきたと指摘した。

  経営トップが関与した不正会計は2008年度から14年度途中まで行われた。この期間中に東芝は09年5月の3330億円の公募増資を含め資本市場から約1兆円を調達した。監視委は15年12月に有価証券報告書の虚偽記載(金融商品取引法違反)で73億7350万円の課徴金納付勧告を出しているが、刑事告発には至っていない。

  東芝広報担当の平木香織氏は、金融当局の調査について「お答えする立場にない」と述べた。

2000億円規模の決算修正

  長谷川氏は「これだけの企業が課徴金を科されるようなことをしていた」とした上で、不正会計に基づいて同社がエクイティファイナンスをしてきた事実を受け止めなくてはならないと指摘した。

  東芝の今後の調査については、「新体制の下で確実に検討して対処すべき案件であると肝に銘じている」と語った。ただ、具体的な調査状況についてはコメントを差し控えた。長谷川氏は13日に委員長に就任した。

  東芝の第三者委員会報告書によると、経営トップの圧力により、社内のさまざまな部署で08年度~14年度途中まで工事進行基準を利用した利益の前倒し計上など不正な会計処理が行われた結果、有価証券報告書の修正を迫られた。利益水増しと減損処理などで税前利益を2306億円減額修正している。

  金商法では有価証券届出書または報告書の虚偽記載の刑罰は、実行行為者に10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらが併科される。また、法人の場合は7億円以下の罰金が科せされる可能性がある。

国際金融センター

  長谷川氏は東京を国際金融センターにするプロジェクトに関連し、監視委の機能強化が必要だとの考えを示した。具体的にはIT(情報技術)を駆使したクロスボーダー取引などが増えていることから、非居住者や海外投資ファンドによる不公正取引に加え、超高速取引に起因する違反行為の監視などを強化する。

  このほかインサイダー取引事案では、従来の情報伝達経路のみならず、いわば仲良しクラブのような仲間うちでの情報漏えいなども想定し、これまでにない情報収集チャンネルの多様化・強化策を講じていく方針を明らかにした。複数の証券会社を巧みに使い投資家をだますような新手のデイトレーダーの取引なども注視する。

長谷川充弘(はせがわ・みつひろ)1953年11月25日生、63歳。80年東大法卒、82年司法修習終了後、大阪、広島、神戸、東京など各地方検察庁検事を経て、03年東京高検検事、10年最高検検事、15年広島高検検事長。

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