安倍晋三内閣が来年度に入札を通じて機関投資家に販売する国債の市中発行額は141.2兆円と4年連続で前年度を下回る。償還の増加で財投債が約4.5兆円、借換債が約3兆円減少。中期債の大幅減に加え、指標となる10年債も1998年度以来の減額となる一方、超長期債は実質的に増発となった。

  22日に閣議決定した2017年度の一般会計予算案に伴う国債発行計画によると、市場の需給に影響を及ぼすカレンダーベースの市中発行額は今年度当初計画を5兆8000億円下回る。国債市場特別参加者に対する入札後の追加発行は1兆8420億円多い7兆4620億円を計上した。

  市中発行の年限別では、マイナス利回りが常態化している短中期債を合計4.8兆円減額。1年割引短期国債と2年債を1.2兆円ずつ、5年債は2.4兆円減らした。10年債は1.2兆円減額。超長期債の20年物は1.2兆円減らす一方、30年債は据え置き、40年債は0.6兆円増と3年連続で増やす。ただ、市場の需給をならすための流動性供給入札を超長期ゾーンを中心に1.2兆円増やすため、実質的には増額となる。

  発行方式は2年債と5年債がそれぞれ毎月2.2兆円で年26.4兆円ずつ、10年債は月2.3兆円で年27.6兆円、20年債は月1兆円で年12兆円、30年債は月8000億円で年9.6兆円。40年債は奇数月に5000億円、年3兆円発行する。1年割引短期国債は23.8兆円だが、発行計画に含まない同年限の政府短期証券と合わせ、毎月2.3兆円発行する。

マーケット反応薄、日銀対応が焦点に

  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、発行計画について、「マイナス金利の短いゾーンの需要が減ってきているというところで、そこのところを中心に全般的に減らしたという印象」と分析。その上で、「既に報道されていた内容で、市場へのインプリケーションはもうない」とし、「国債発行の減額が決まったことによって、日銀がそれに合わせて4月からきっちり買い入れ減額をしてくるかというところが焦点になってくる」と話した。

  国債市場の流動性を維持・向上させるため、投資家の需要が強い既発債を追加発行する流動供給入札は年10.8兆円と1.2兆円増額。今年度から新設した残存1年超5年以下は年1.2兆円で据え置くが、5年超15.5年以下を6.6兆円、15.5年超39年未満を3兆円と6000億円ずつ増やす。3ゾーンの発行方式は奇数月に2000億円、毎月5000億円、偶数月に4000億円だが、来年度については市場関係者との意見交換を踏まえ、柔軟に調整する。

  消費者物価が上昇すると元本・利払いが増える10年物価連動債は昨年度第2次補正で年2兆円から1.6兆円に減額。インフレ率がマイナス圏に低迷する中、来年度も横ばいにとどめる。4、8、10月と18年2月に4000億円ずつ発行。市場環境や投資需要に応じ、発行額は柔軟に調整する。

  物価連動債は財務省が04年3月に発行を始めたが、市況の低迷を背景に08年8月でいったん発行を中止。13年度に発行を再開した。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は14年度に購入を開始した。ドナルド・トランプ次期米大統領の景気刺激策を先取りした世界的な株高・金利上昇と円安や原油相場の反発が来年度も続けば、インフレ率の持ち直し傾向が強まる可能性がある。

平均償還年限は9年5カ月

  平均償還年限は9年5カ月と今年度9月の変更後より2カ月延びる。日本銀行の異次元緩和と金利コントロール下の低金利環境を円滑かつ効率的に活用し、将来の借り換えリスクを抑えるため、投資家需要を的確に反映した年限構成を意識した。

  18年度の借換債を来年度に発行する前倒債などでの年度間調整分はマイナス6987億円。今年度当初のマイナス4172億円や第3次補正後の2兆9005億円を下回る。来年度は前倒債の発行限度額が56兆円。市中からの買入消却は総額1兆円程度を上限に実施する。日銀が償還を迎えた保有国債を1年だけ割引短期国債に再投資する日銀乗り換えは5兆円少ない3兆円。個人向け販売分は1兆円増の3兆円を見込む。

  日銀は2%の物価目標を達成するための金融緩和策を9月に変更したが、マネタリーベースを年80兆円程度、国債保有額の膨張で増やす方針は維持。これは政府が来年度発行する新規財源債34.4兆円の2倍超に相当。国債買い入れオペは月8兆-12兆円と、来年度の市中発行額の8割超に及ぶ計算だ。

  国債発行総額は前年度当初予算より8兆2395億円少ない153兆9633億円と3年連続で減少。新規財源債の減少は622億円にとどまったが、満期を迎える国債の償還資金を手当てする借換債が106兆790億円と3兆354億円減少。財投債は4兆5000億円少ない12兆円。東日本大震災からの復旧・復興を目的とした復興債は6419億円減の1兆5145億円となる。

  普通国債の発行残高は17年度末に約865兆円と1年間で約20兆円増える見通し。国・地方の長期債務残高は1094兆円程度に膨らむ。国債・借入金・国庫短期証券を合わせた国の債務残高は9月末に1062.6兆円と過去最大。国際通貨基金(IMF)は政府債務残高の対国内総生産(GDP)比が来年末に253%に達すると予測。少なくとも20年まで世界最悪の座を脱け出せないとみている。

【当初計画の国債発行額比較】(単位:億円)
*T

  2016年度当初16年度3次補正後  17年度当初
発行総額         1,622,028       1,697,999      1,539,633
新規財源債            344,320           390,346        343,698
復興債             21,564            19,037         15,145
財投債            165,000           196,000        120,000
借換債         1,091,144         1,092,616      1,060,790
市中発行分      1,522,028         1,585,999      1,479,633
カレンダーベース      1,470,000         1,470,000      1,412,000
第2非価格競争入札             56,200             86,994         74,620
年度間調整分            -4,172             29,005        -6,987 
個人向け販売(窓販含む)             20,000             32,000         30,000
公的部門(日銀乗換)             80,000             80,000         30,000

*T

年限別国債(市中消化)発行額・回数は次の通り
 区分        年    月    頻度
*T

40年債 3兆円0.5兆円年6回
30年債9.6兆円0.8兆円年12回
20年債12兆円1兆円年12回
10年債27.6兆円2.3兆円年12回
5年債26.4兆円2.2兆円年12回
2年債26.4兆円2.2兆円年12回
1年
割引短期国債

23.8兆円
1.9兆円
2兆円
年2回
年10回
10年物価連動債 1.6兆円0.4兆円年4回
流動性供給10.8兆円 -- --
計141.2兆円

*T

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE