日本銀行の黒田東彦総裁は、長短金利の操作目標引き上げを議論するのは時期尚早だと述べ、早期の利上げ観測を一蹴する一方で、急速に進んだ円安については、現在の水準は2月ごろと同じであって「別に驚くような水準とも思っていない」と語り、容認姿勢を鮮明にした。

  11月の米大統領選以降、大規模な財政出動への期待から米長期金利が急上昇しており、ドル高円安が進行。国内長期金利にも上昇圧力が加わっており、一部で日銀が長期金利の操作目標を早期に引き上げるのではないか、との見方が出始めていた。ブルームバーグがエコノミスト39人を対象に6-12日に実施した調査では、10人(26%)が黒田総裁の任期中に長期金利目標を引き上げると予想した。

記者会見する黒田総裁
記者会見する黒田総裁
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  しかし、黒田総裁は現状維持を決めた20日の金融政策決定会合後の会見で、2%物価目標の達成は「まだまだ遠い」と述べた上で、長短金利の操作目標の引き上げを「具体的に議論するのは時期尚早かなというふうに思っている」と述べた。大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは会見後のリポートで、「長期金利上昇の動きをけん制したい意向は、明確になった」と指摘する。

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  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは20日付のリポートで、日銀が簡単に「金利水準の引き上げへ踏み切るとは考えにくい」と指摘。少なくとも2017年中は、多少の景気認識の引き上げや外部環境(原油高・円安)を反映した(エネルギー価格を含む)コア消費者物価指数の上昇が生じても、「淡々と金融政策運営を据え置く可能性が高いだろう」と予想する。

円安は心地よいが

  早期の利上げ観測を打ち消した黒田総裁だが、対照的に円安に対しては寛容な姿勢を示した。丸山氏は「米国において金利上昇が進む下で、金融政策を現状維持とさえすれば、金利差という観点から円安が進行するという現在の金融市場の環境を日銀は相当に心地良く考えているはずである」とみる。

  もっとも、このまま米金利上昇やドル高円安を通じて国内の金利上昇圧力が高まれば、日銀は長期金利を0%程度に抑えるため、長期国債の買い入れ増額を迫られる可能性もある。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは会合後のリポートで、日銀にとって「円安が進むことは歓迎されるとしても、日本の金利上昇を買い入れ増加によって抑え込むことは悩ましいことだと考えるだろう」という。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは会合後のリポートで、「金利上昇圧力が強い中で、長期金利をゼロ近傍に維持し続ければ、日銀のバランスシートの膨張ペースは加速する恐れがあり、将来的に金融政策のコントロールを失うリスクが高まる」と指摘。「日銀が意外に早い段階で、長期金利の誘導目標を引き上げる可能性がある」とみる。

  河野氏はその上で、「円安のスピードは想定以上に速く、来年前半中にも誘導目標が引き上げられる可能性も否定できない。今後の為替動向次第では、1月の展望リポートの公表に合わせて、年間約80兆円という国債買い入れペースのめどを外すと同時に、政策変更が実施される可能性もゼロとは言い切れない」としている。

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