20日の東京外国為替市場ではドル・円相場が上昇し、1ドル=118円台に接近する場面があった。日本銀行が金融政策の現状維持を決めたことや黒田東彦総裁の為替をめぐる発言を背景に、ドル買い・円売りが優勢となった。

  午後4時半現在のドル・円は前日比0.7%高の1ドル=117円89銭。朝方に付けた116円99銭から、日銀の金融政策の発表後に117円台後半に水準を切り上げ、黒田総裁が現行の円安水準を容認する姿勢を示すと一時117円96銭までドル高・円安が進んだ。

  三菱UFJ信託銀行資金為替部為替市場課の一口義仁課長は、「ドル・円は日銀によるイールドカーブコントロールの部分に変更がなかったことで、日米金利差拡大への期待が相場を押し上げている」と説明し、「基本的に、トランプ新政権に対する期待がリードしている相場で、確かに上昇ペースは速いが、妨げるものがないうちは上昇が続きやすい」と述べた。

  またFXプライムbyGMOの柳沢浩チーフアナリストは、「一部で日銀が長期金利目標をほぼゼロ%から引き上げるとの観測があったようで、それを背景にドル・円をショートにしていた。それが裏切られたので、ショートカバーが入ったのだろう」と分析した。

  日銀はこの日、9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を決定。金融調節方針は、長期金利を0%程度、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)をマイナス0.1%といずれも据え置いたほか、長期国債の保有残高の年間増加額のめどである約80兆円も維持した。足元の景気判断については、「緩やかな回復基調を続けている」として上方修正した。

  三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの内田稔チーフアナリストは、「結果自体は、為替を最も重視している日銀だけに想定通りと言える。ドル・円上昇の流れを自ら崩すようなことはしないということだろう」と解説した。

  20日の東京株式相場は反発。日経平均株価は売りが先行した後、日銀の現状維持決定や景気判断の上方修正を受けて値を戻し、前日比102円93銭(0.5%)高の1万9494円53銭で取引を終えた。

  あおぞら銀行市場商品部部長の諸我晃氏は、ドル・円が戻した背景として、「景気の方を少し上方修正したので、株が少し上がっているせいか」と言う。

  黒田総裁は午後の記者会見で、最近の為替や物価の動向について、円安は輸入物価を通じて直接物価上昇要因として作用すると述べ、円安は長い目で需給や予想物価を通じて間接的に物価に影響を与えるとの見方を示した。その上で、今の円安は別に驚く水準にはなっていないとし、今の時点で行き過ぎとか弊害があるとの見通しは持ってないと述べた。

  大和証券投資戦略部の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、「物価を2%に持っていくには円安や資源価格の動向が必要で、日銀はわが道を行くしかない。もう少し円安になると国内から円安けん制の声も上がりかねないが、そこには耳を貸さずに円安誘導を続けるだろう」と説明した。

  19日の海外市場では、地政学リスクへの警戒感が強まり、米長期金利の低下に連れて、一時116円55銭と3営業日ぶりのドル安・円高に振れる場面があった。ロシアの駐トルコ大使がトルコ首都アンカラで銃撃され死亡。ドイツの首都ベルリンでは、クリスマスマーケットにトラックが突入し、12人が死亡した。

  米10年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い2.52%台まで低下した。この日の時間外取引では一時2.57%程度に上昇した。

  みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは、昨日の地政学リスクを受けて、「欧米金利が低下して、リスク回避的な債券買いの動きが見られたが、今までが売られ過ぎだった。あくまでまだ調整の範囲と思ってみている」と述べた。

イエレンFRB議長
イエレンFRB議長
Photographer: Pete Marovich/Bloomberg

  イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は19日の講演で、労働市場はここ10年近くで最も力強い状況と指摘し、賃金上昇の加速を示す兆候が見られるとの認識を示した。

  大和証の石月氏は、「来年3回の米利上げに市場では懐疑的な見方もあるが、実際にやれる可能性はある。雇用が逼迫(ひっぱく)している中で、大盤振る舞いとはいかなくても財政・税制から景気刺激的な政策が打たれるのは間違いなく、インフレ期待が相当上がる可能性がある」と予想。ただ、「あまり急速な利上げは米国経済にも新興国にもマイナス」と語った。

  ユーロ・ドル相場は同時刻現在、0.1%安の1ユーロ=1.0389ドル。一時は1ユーロ=1.0376ドルと、3営業日ぶりのユーロ安・ドル高水準を付けた。

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