日本銀行は20日の金融政策決定会合で政策運営方針を決定する。現状維持が見込まれる中、トランプ氏の米大統領選の勝利後、大幅に進んだ円安や長期金利の上昇など金融市場の変化に黒田東彦総裁が会合後の会見でどのような見解を示すかに市場の関心は集まっている。

  ブルームバーグがエコノミスト39人を対象に6-12日に実施した調査では、全員が現状維持を予想した。円安の進行とともに追加緩和期待は大きく後退しており、黒田総裁の任期の2018年4月まで追加緩和はないとの見方が25人(64%)と多数を占めた。

  東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストは同調査で、「トランプ勝利によってドル高円安が進行、当面、日銀が追加緩和に踏み込む理由はなくなった」と指摘。東短リサーチの加藤出チーフエコノミストも「トランプ相場で円安が進んだことで、日銀はホッとしているところだろう。当面の日銀は現行のマイナス金利と10年金利誘導目標を維持して、じっと待つ姿勢を続けるだろう」と予想する。

  金融政策決定会合は従来、おおむね正午から午後1時の間に終了し、それから間もなく結果が発表される。黒田東彦総裁は午後3時半に記者会見を行う。今会合の注目点は以下の通り。

長期金利の上昇にどう対応するか

  日銀は9月の会合で、マネーの量を操作目標としてきた従来の金融緩和から、長短金利を操作目標とする新たな枠組み(イールドカーブ・コントロール)に変更。長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」とすることを決定した。

  トランプ氏の米大統領選の勝利以降、大規模な財政出動への期待から米長期金利が急上昇しており、国内の長期金利にも上昇圧力が加わっている。急激な金利上昇を抑えるため、日銀は11月17日に新枠組み導入後初めて、中期ゾーンで指定した利回りで国債を無制限に買い入れる指し値オペを通知。14日には超長期ゾーンの国債買い入れ額を増額した。

  日銀が超長期ゾーン主導の長期金利上昇をけん制したことで超長期、長期ゾーンの金利はいったん低下に転じたが、14日の米連銀の利上げ後の米金利上昇やドル高円安の進行を受けて、10年物金利は16日一時0.1%と10カ月半ぶりの高水準まで上昇した。黒田総裁が会見でどのような見解を示すかが注目点の一つだ。

長期金利目標の行方

  メリルリンチ証券のデバリエ・いずみチーフエコノミストは16日付のリポートで、日銀が近い将来、金利目標を引き上げる可能性はあるか、と質問する投資家が出始めていると指摘。その上で、黒田総裁は会見で「早期の利上げ予想を打ち消し、日銀は必要に応じ、固定利回りで国債を買い入れる指し値オペを利用し、無制限に国債を買い入れる用意があるとあらためて述べる」とみている。

  ブルームバーグ調査では、黒田総裁の任期中はマイナス0.1%の短期政策金利の引き上げはないとの予想は9割と圧倒的多数だった一方、長期金利目標については26%が引き上げを予想した。クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは同調査で、「1ドル=120円を超えた時点から、日銀は長期国債購入額の縮小、10年国債金利誘導目標の引き上げを真剣に検討すべきだ」という。

  一方、ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは19日付のリポートで、日銀がいったん長期金利目標を引き上げれば、「さらなる引き上げを織り込んでカーブがスティープしていくだけだ」と指摘。10年金利の0%程度を変更する時は、「2%インフレがみえて、イールドカーブ・コントロール政策から脱却する時だ」とみている。

情勢判断を上方修正か

  企業短期経済観測調査(短観、12月調査)で、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が昨年6月調査以来6期ぶりに改善。同調査の「企業の物価見通し」では、1年後の上昇率の平均値が2014年3月の統計開始後、初めて前回調査を上回った。

  こうした経済指標の改善を受けて、日銀が情勢判断を上方修正するかどうかも注目材料だ。SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは19日付のリポートで、「従来の『輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている』から、前半部分の削除か修正、後半部分の『基調としては』の削除が検討されるようだ」とみている。


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