三菱商事のオーストラリアでの石炭事業の業績が急回復している。今期(2017年3月期)には人件費などのコストをピーク時の12年度比で約4割削減できる見通し。市況回復も重なり、株式市場では同社の今期純利益を会社予想3300億円を上回る4000億円に達するとの見方も出ている。

  「2年ぐらい前にもうMDPは終わったと言われたが、まだまだ終わってはいない」。金属グループCEOの西浦完司常務執行役員はブルームバーグのインタビューで、こう反転攻勢を期した。MDPとは主に製鉄用の原料炭事業を英豪系BHPビリトンと共同で手掛ける豪子会社の三菱デベロップメントを指す。

  中国の資源爆食を背景に商品市況が軒並み急騰した09年3月期には、1900億円もの利益を生み出した主力事業。市況上昇でコストをかけて増産しても利益は拡大していたが、中国の成長鈍化が明らかとなった12年以降には資源価格も下落。直近では今年1-3月まで4四半期連続の赤字と低迷した。

  その間取り組んだのがコストを削減した上での生産量の拡大。鉱山現場で働く従業員をぎりぎりまで削減し、違約金を払ってでもより安い採掘請負業者へと切り替えた。鉱山機械のメンテナンスの頻度も安全に支障が出ない範囲で減らし、ダンプトラックのタイヤのすり減り方についても、どのルートをどの速度で走れば最も長持ちするのか研究するなど「ありとあらゆることを行った」という。

  15年度は12年度比で35%のコスト削減を実現。それでも利益を出せない水準にまで市況は下落した。16年度はさらに前年度比10%のコストを削った。MDPの損益は4-9月に223億円の黒字(前年同期は135億円の赤字)へと改善。今期はMDPを含めた金属グループ全体の資源事業で約200億円のコスト削減効果を見込む。

  西浦常務は「市況はマーケットが決めるのでどうしようもないが、自分たちの創意工夫によってコスト削減はできる」と説明。「われわれの操業が赤字ならば、原料炭の世界で黒字で操業できるところはほとんどない」と自負した上で、「市況がたとえ下落しても最低限赤字にはならない収益体質を作る」と述べた。

  JPモルガン証券の森和久アナリストは、MDPの原料炭事業の生産コストは1トン当たり60ドルを割り込むと試算しており「コスト競争力は非常に高い」と指摘。17年1ー3月期の原料炭のスポット価格を同200ドルと想定し、MDPの損益は前期の577億円の損失から今期は1300億円強の黒字に回復すると予想。三菱商事全体の純利益は4000億円に達するとみる。

引き続き高い貢献度

  減価償却費を含めたMDPの生産コストは同80-90ドル程度とみており、原料炭価格が下落したとしても一定程度の水準を維持できれば「業績への貢献度は引き続き高い」との見方を示す。

  指標となる原料炭のスポット価格は年初に1トン当たり70ドル台だったが、8月以降に上昇基調を強め、11月には5年ぶりとなる300ドル台に乗せた。過剰生産の抑制を掲げる中国政府が今春、石炭鉱山の操業日数を330日から276日以下に制限したことなどで供給が絞られた影響が大きい。

  MDPとBHPとの合弁事業は、原料炭の海上貿易量の約3割を占める世界最大手。そのため、市況に与える影響が大きいなどとして原料炭価格の見通しやMDPの利益予想は開示していない。

資源の投資残高増やさない

  三菱商事は銅など資源価格の下落で前期(16年3月期)に多額の減損損失を計上し、初の赤字決算に陥った。今期から3年間の中期経営計画では資源価格の上昇を見込まない前提としており、資源事業では原料炭と銅、天然ガスに絞り、資産入れ替えを通じて投資残高を増やさない方針を掲げた。

  西浦常務は、原料炭事業は世界で上位4分の1、銅事業は3分の1に入るコスト競争力を持つと説明。それでも、より競争力のある資産が売りに出された場合には積極的に入れ替えを検討したいと述べた。銅については「希少性や偏在性の強い商品」と指摘。需給バランスも20年ごろに向けてひっ迫していくとして「将来的には原料炭と肩を並べるか、それ以上になる事業」と期待を寄せた。

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