数十年来の「一つの中国」政策が同国から貿易上の譲歩を勝ち取るための交渉の切り札に使われる可能性をトランプ次期米大統領が示唆したことは、同氏がホストを務めたテレビ番組「アプレンティス」の熱心なファンを喜ばせるかもしれない大胆な交渉戦術だ。

  だが、次期大統領が少しでも本気だとすれば、大中華圏に大きな経済的利害を持つ米国の企業経営者にとって、このようなはったりは巨大なリスクを将来的に突き付けるものとなる。台湾の国際的立場を高めるようないかなる動きも、直ちに強硬な反応を生じさせる可能性が高く、2015年に往復ベースで6270億ドル(約72兆円)に達した米中二国間の貿易を危険にさらしかねない。

  中国は明らかに自前の切り札を持ち、同国政府は台湾に対しても巨大な影響力がある。台湾経済が着実に本土との結びつきを高めているためだ。

  中国指導部はまた、米国からの輸入品に露骨に関税を課す以外にも、もっと巧妙な手段を自由に使える。独占禁止法の選別的適用や事業規制のほか、政府調達の入札を通じ、競争条件を米企業のライバルである欧州やアジアの企業に有利な形にすることも可能だ。米国の昨年の対中貿易赤字は3370億ドルだった。

  在上海米国商業会議所のケネス・ジャレット会頭は「米中関係が悪化すると誰もが影響を受ける。中国の国有企業はかなりの購買力があり、米企業を避けるような政府の応対ぶりから影響を受けたり、特定の指令を下されたりするだろう。企業は中国政府のムードを読もうとするため、それが経済活動を形作ることになる」と指摘した。

  米企業経営者も中国の取引先も、一つの中国政策を転換させるというトランプ次期大統領の尊大な発言によるビジネスへの影響を警戒している。米国は1979年に一つの中国政策を踏まえて、中国と国交を正常化し、台湾との正式な外交関係を絶った経緯がある。

  米中関係悪化で最も影響を受けるのは、アジア、特に台湾に巨大な供給網を持つシリコンバレーの大手テクノロジー企業だろう。シリコンバレーにあるモンテ・ジェイド科学技術協会の理事会メンバー、エリック・ファン氏は「テクノロジー企業はかなり神経質になっている」と話す。

  

原題:Trump’s China Bluster Threatens U.S. Exports and Supply Networks(抜粋)

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