燃費不正問題から再生を図る三菱自動車は14日、臨時株主総会を開催し、日産自動車のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)を取締役に迎えるなど新経営体制を発足させた。臨時総会では、社外取締役の選任をめぐる批判と質問が相次いだ。

  千葉市内で開催された臨時総会では、新体制などの議案を賛成多数で可決した。日産自からは、渉外などを担当する専務の川口均氏と、経理などを担当する常務の軽部博氏が社外取締役となる。今年6月に日産自の取締役会技術顧問から三菱自の開発・品質担当の副社長となった山下光彦氏と三菱自の益子修社長は再任された。

  臨時総会では、株主から社外取締役の役割と責任について質問が相次いだ。特に旧通商産業省(現在の経済産業省)出身者を選任する必要性については、複数の株主が異議を唱え、再任となった坂本春生氏については燃費不正問題に際してどのように関わったか直接答えてほしいという要望があがった。

  益子氏はこの要望を受け入れず、「燃費問題について社外取締役は認識できる立場にはなく、発生してから伝えたと」と述べた。また旧通産省出身者を受け入れる理由については、「社外取締役には高い見識と貴重な経験を生かした厳しいご意見をいただいている」と述べた。

  ジェフリーズ証券のズヘール・カーン調査部長は、燃費不正問題からの再生に向けて新しい血を入れるべき局面で、専門知識を持ち、独立した外部の目で経営を判断できる社外取締役が欠如しており、新経営体制が「冗談のような構成」と指摘した。

  社外取締役は従来の4人から6人へ増員されたが、新任3人のうち2人は日産自の元執行役員、もう1人は、旧通産省出身で日産自の副会長を務めた経験がある。三菱グループ・日産自の双方と関係がない唯一の独立役員は、旧通産省退官後に公益社団法人や財団法人を歴任しており、経営判断に異議を唱え緊張感が保てる経歴かは疑問だという。

不正見抜けなかった経緯

  新役員体制は、日産自の出身者が4人、三菱商事や三菱重工業など三菱グループ企業出身が5人、旧通産省出身が2人の計11人となる。三菱自からの生え抜きはゼロで、取締役の平均年齢は約67歳と、国内自動車業界ではスズキと並んで最も高い水準にある。カーン氏は、三菱グループで構成した旧経営体制は一連の燃費不正を見抜けなかった経緯があり、大幅な経営刷新を期待していたとコメントした。

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【承認された取締役】
カルロス・ゴーン氏(日産自動車出身、62歳)
益子修氏(三菱商事出身、67歳)
山下光彦氏(日産自動車出身、63歳)
白地浩三氏(三菱商事出身、62歳)
池谷光司氏(三菱東京UFJ銀行出身、59歳)
坂本春生氏(旧通商産業省出身、78歳)
宮永俊一氏(三菱重工業出身、68歳)
小林健氏(三菱商事出身、67歳)
伊佐山建志氏(旧通商産業省出身、73歳)
川口均氏(日産自動車出身、63歳)
軽部博氏(日産自動車出身、60歳)
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  一方、評価すべき点として、カーン氏は業績連動報酬と株式等関連報酬の新設を挙げた。取締役の年額報酬上限20億円とは別枠で、総額で年額10億円以内を支給できる。三菱自の取締役で最も多く自社株を保有しているのは益子氏の1万7573株で、13日終値で時価総額は約1100万円。カーン氏は「何を達成したらその報酬が得られるかを明らかにするのがベスト」としながらも、業績が報酬に影響するという自覚を持つことが経営への関わり方に良い影響を与えるとみている。

  新体制の承認に合わせ、三菱自は組織改正を発表した。機能ごとに4人の執行責任者が中核となるとともに、組織のフラット化と階層の簡素化によりコミュニケーション円滑化と意思決定の迅速化を図る。

  開発部門では燃費不正問題を受け、それまで1人に集中していた商品戦略の責任を収益責任、商品力確保、開発責任の3人に分散する。成果に連動した給与体系、報酬制度を来年度から執行役員や部長クラスにも適用する。

ゴーン氏のコミットメント

  臨時総会では取締役として承認されたゴーン氏があいさつに立ち、燃費不正問題で損なわれた信用を取り戻すこと、三菱自を黒字化して持続可能な成長軌道に乗せること、また三菱自のアイデンティティを尊重することを3つのコミットメントとして取り組みを約束した。

  三菱自は4月に燃費試験の不正行為が発覚したのをきっかけに、日産自と業務・資本提携で基本合意した。日産自は10月に三菱自の第三者割当増資を引き受け、発行株式数で約34%の筆頭株主となった。

  業務提携ではあらゆる事業・地域で相乗効果を追求するとしており、電気自動車(EV)の車台(プラットホーム)の共同利用や、三菱自の技術を使ったプラグインハイブリッド車(PHV)投入なども計画している。幹部人事では日産自と仏ルノーで役員を務めたトレバー・マン氏が11月1日付で三菱自の最高執行責任者(COO)に就任している。

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