東京電力ホールディングスは東日本大震災後初の社債を2017年3月期中に発行することを目指しているが、目標達成は厳しくなりつつあると、格付け会社S&Pグローバル・レーティングは見ている。

  福島第一原発事故以降、国費注入やリストラを経て東電の信用力は改善しつつあり、柏崎刈羽原発の運転再開や社債市場復帰の見通しを考慮してS&Pは、同社格付け見通しを「ポジティブ」(現行はBB-)としている。一方、同原発の再稼働は、反対する米山隆一氏の新潟県知事当選で不透明感が増しており、原発の廃炉・損害賠償費用の負担方法や東電への支援策も定まっていない。
  
  経産省の「東京電力改革・1F問題委員会」は、9日に原発事故の関連費用の見積もりを従来想定の11兆円から21.5兆円に倍増すると発表。廃炉費用は約2兆円から8兆円に大きく増加した。S&Pの柴田宏樹氏は、説明会で起債再開について「前提条件、業績見通し等が明確になった時点でするのが自然だ」と説明。東電の債務超過を防ぐための支援策が検討されているものの、支援策の閣議決定や国会決議、事業計画策定の期間を考慮すると、起債は「3月末までに間にあうかどうか」疑問だという。

  柴田氏はまた、実際に起債する送配電子会社の東京電力パワーグリッドについて、「事業自体は安定しているが、HDカンパニーの制約を受けてグループと同じ信用力になる」と述べた。HDカンパニーの負担する福島事故費用の上振れリスクを遮断できる仕組みが整えば、送配電子会社はグループ信用力より1-3ノッチ上回る可能性もあるとの見方を示した。

  東京電力ホールディングスの広報室は、「今年度中の社債発行を目指していきたいと思っている」とコメントした。

新発債はスプレッド上乗せも

  ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸年金研究部長は、東電の信用力について「倒産はしないとみんな思っている」が、原発が再稼働できるかなどのリスクもあると指摘。今後、東電が新発債を出す際には「他の電力会社を上回るスプレッドが乗る可能性もある」との見方を示した。

  ブルームバーグのデータによると、21年償還の東電債の対国債スプレッドは、現在55.1ベーシスポイント(bp)。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると国内社債の平均スプレッドは35bpで推移している。

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