日本政府が経済統計の精度向上に向け見直しを進める中、東京大学発ベンチャーのナウキャストは、リアルタイムでの日本と米国の国内総生産(GDP)予想提供を来年2月にも開始する。政府公表の経済指標のほか、米国の人工衛星から送られてくる地上の光量データから経済活動の状態を読み取り、政府統計よりも一足早く予測する。

  衛星画像から計測できる夜間光量とGDPなどの経済指標との相関関係の高さは、米ブラウン大学のバーノン・ヘンダーソン教授らにより研究されている。日本のGDP統計は、各種の経済指標を分析・加工して算出するが、指標が出揃うまで時間が掛かり、速報値の発表は四半期が終わってから約1カ月半後だ。これに対し、人工衛星データを使えば指標が全て出揃うのを待たずに、早くGDP推計値を出せるようになる。

  ナウキャストのチーフデータサイエンティストの林祐輔氏は、宇宙から見える光のうち、油田などで発生する炎である「ガスフレアなど人間が出す光だけを取り出すことで、人間の活動が活発になっているかを知ることができる」と述べ、統計が十分に整備されていない新興国の分析にも有効だという。衛星からは地表温度も読み取れ、将来は「発電所や製鉄所、石油精製所などの温度の変化を見ることで生産量の予測もできる」と話す。

  林良太CEO(31)は、信頼性を疑問視されている中国のGDP予測など「投資家のニーズは大きい」と話し、来年中には国内外のヘッジファンドや年金など100社程度へのサービス提供することを目指す。経済指標すら算出していない国についても「将来的にはモンゴルやアフリカなどのGDP予想などの展開も検討している」と話す。

  予測精度は、エコノミストによる予測の平均値と比べると、GDPが公表される6週間前は同社が高く、2週間前ではほぼ同等。エコノミストの予測が実際の値と大きく異なる場合に、同社の予想が良い結果を出しているという。同社チーフエコノミストの舘祐太氏は「夜間光量を使うことでより精度が高まる」と指摘し、「速報の指標として使える可能性が高い」とみている。

  同社は今年11月、アメリカ海洋大庁(NOAA)から人工衛星データを独占的に得られるよう提携。すでにテスト版の一部を、金融機関やヘッジファンド、年金など既存顧客5社に週数回、配信している。日米に続き、調査対象国を台湾や米国、中国、インド、欧州連合(EU)に拡大し、サービス提供を検討している。

  GDPをはじめとする経済統計の見直しをめぐっては、安倍晋三首相が10月21日の経済財政諮問会議で、日銀とも連携し年内をめどに基本方針を取りまとめるよう関係閣僚に指示するなど、議論が活発化している。シェアリングエコノミーなど時代に即した経済活動をどう反映させるかなど、実態を捉えた見直しが課題となっている。

  ステート・ストリート・グローバル・マーケッツ証券では年金の資産配分考察でGDPなどマクロ経済指標との連動性を分析。セクター・ソリューションズ営業部長の玉置真郁氏は同社も利用するナウキャストの指標は「リアルタイムに蓄積されるビッグデータを活用しており、市場追随性の高い高頻度なマクロ経済指標として特にその予測精度に注目している」と述べた。

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