先週のイタリア国民投票の結果、世界最大の経済地域である欧州で政治・経済・金融面の不透明感は強まった。世界の株式市場はそんな混乱をものともせず、欧州連合(EU)離脱を選択した6月の英国民投票よりも素早く立ち直った。

  結果として、米株式指数は新高値を付けた。ダウ工業株30種平均は11月の大幅高に続いて12月に入っても上値を伸ばし、史上初の2万ドルに迫っている。11月8日の大統領選からは実に約8%高。過去24営業日のうち20営業日で上昇し、13営業日で過去最高値を更新した。

  この目覚ましい躍進は、年初に株価が割安だったからではない。上昇相場は8年目に入り、バリュエーションではほとんどの指標で赤信号でないにしても黄信号がともる。これまで株価を押し上げてきた超低金利という大きな追い風も、世界各地で金利が上昇した今では弱まりつつある。

  世界的な低成長下では、ファンダメンタルズの急速な改善を株価上昇の理由に挙げることも難しい。

  株価を主に押し上げているのは流動性、経済成長、インフレ期待の3つだ。

  企業が海外に蓄えた資金を米国に還流させる見通しが著しく強まり、自社株買いや配当、合併・買収(M&A)など株価水準の支えが強まると市場は見込んでいる。これらは異例の水準にある流動性をいっそう潤沢にし、経済成長や企業利益の拡大に対する後押しを増幅する。

  ただ、流動性や政策期待を武器にする市場は、ファンダメンタルズ改善の実現で補強される必要がある。とりわけ欧州が多大な不透明感に直面している状況では、なおさらだ。その実現には最近発表された景気促進策が具体的な形になり、政治的な履行を続けていく必要があるが、極めて両極化した米議会では過去数年、そのようにうまく運んだことはほとんどない。

  最近の市場の動きは、大統領選での予想外のトランプ氏勝利が既存の政治家に対する有益な「内因性崩壊」、言い換えれば、機能不全の低下や経済のガバナンスを後押しするショックだとの見方を反映している。上下両院を共和党が支配し、税制改革や規制緩和、インフラ投資など実施が容易なことも市場の楽観にいっそうの根拠を与える。これらを成功裏に実現に導いた上で、より難しい政策措置に取り組むことが、楽観を現実に変える鍵になる。

  だが流動性増加という好影響を政策で補強することができなければ、映画「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」に登場した、足を切られても手を切られても「ほんのかすり傷」で自分は「無敵」だと言い張った哀れな黒騎士の運命を、市場はたどることになりかねない。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:How to Make This Stock-Market Rally Last: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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