米ロサンゼルス市で不動産会社に勤めるシングルマザー、ラウラ・モレノさんは、毎朝7時に家を出て渋滞の激しい高速道路を運転して通勤する。2001年に買ったホンダの小型車「シビック」は毎日2時間の往復にもかかわらず故障したことがない。ラウラさんは、同じ職場のまだ稼ぎの少ない若手にはホンダ車を勧めている。

シビック
シビック
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  大型SUVなどライトトラック市場が急拡大する米国で、ホンダはシビックやセダン車「アコード」の販売が好調だ。ロサンゼルス郊外でホンダ販売店を経営するデーブ・コナント氏は、新型シビックになってから顧客層が若者を含めた「年収の低い」人たちにも広がりつつあると述べた。これまでは平均年収以上の購買者が多かったが、「信用不安のある層」を中心に増えていると述べた。

  米国では低所得・低信用者向けのサブプライム自動車ローンの利用者が増加している。米連邦準備制度理事会(FRB)は11月の会合で、利上げの論拠は強まっていると判断しており、12月半ばの会合で利上げ観測が高まっている。金利が上昇した場合、こうした層の購買力低下につながることが懸念される。

  SBI証券の遠藤功治アナリストは、金利上昇の影響は全ての自動車メーカーに及び、ホンダの信用不安がある顧客層への拡大が直ちに事業リスクにつながるわけではないとしながらも、「北米事業の利益率が異様に低いホンダにとって、リスクは上昇方向にある」という見方を示した。

  ブルームバーグのデータによると15年の世界販売台数トップ10の自動車メーカーで、ホンダは売上高で5位につけているが、営業利益率は最下位だ。15年度の北米事業だけをみるとホンダの営業利益率は2.47%で、日産自動車の6.1%、トヨタ自動車の同4.8%と比べても低い。

サブプライムローン

  調査会社のエクスペリアンによると、16年6-9月の自動車ローンのうちサブプライムとさらに信用の低いディープサブプライムの割合は前年同期比2ポイント上昇の23%だった。今のところ、60日間の延滞率は昨年と同レベルの2.36%にとどまっている。

  米国ではサブプライムローンの拡大に対してバブル崩壊を懸念する声もあったが、エクスペリアンの自動車ファイナンス部門ディレクター、メリンダ・ザブリツキ氏は「サブプライム・バブルが市場を破滅に導くと予想していたなら、今期の現状をみてほしい」と、6ー9月の好転を踏まえて、風評に惑わされないよう呼びかけている。

  しかし、ローン期間は長期化の傾向にあり、49ー60カ月程度の短期ローン利用者が減少傾向にある一方、73-84カ月のローン利用者は約12%増加している。長期ローンでは金利上昇による負担が増えることから新規購買層への影響が懸念される。米国ではFRBの利上げ観測に加え、次期大統領のドナルド・トランプ氏が大規模なインフラ投資の意向を表明したことから、既に10年債の利回りは1.85%から2.49%に上昇している。

  ホンダにとって北米は15年度の四輪車販売台数の約4割、売り上げ収益で6割近くを占める最大市場で、米国の市場動向が与える影響は大きい。

本格的なピックアップには参入せず

  ホンダは低利益率の要因として小型車中心のラインアップを挙げている。収益性の高い大型SUVなどライトトラックの販売比率を上げるため、来年4月までに北米で大幅に生産を入れ替える計画だ。ただ、11月の米国市場のライトトラック比率62%に対し、ホンダは49%にとどまっており、ホンダ北米地域本部長の神子柴寿昭専務は生産体制を拡充しても市場比率と同レベルまでは引き上げられないとみている。

リッジライン
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Photographer: Daniel Acker/Bloomberg

  また、ホンダの販売車種は、今年6月にフルモデルチェンジしたライトトラック「リッジライン」を含め乗用車ベースの車台(プラットホーム)を使った構造となっており、本格的なピックアップトラック愛好者を取り込めていないのが現状だ。八郷隆弘社長は11月の取材に、「長期間使う前提の車台にあまりハイテクではないエンジンを載せる」構造は、「われわれの顧客層とは違う」として、その分野に本格参入する意思はないと述べた。

  高級車のアキュラブランドを除くホンダの今年1ー11月の米国販売は約133万台で、うち昨年11月に新型車を出したシビック、セダンのアコードと小型SUVの「CR-V」がそれぞれ25%前後を占めている。

利益改善への期待

  ホンダがもう一つの低利益率の要因として挙げる品質費用では、タカタ製エアバッグの不具合問題が大きな負担となっていた。製品保証引当金繰入額は14年度が1200億円、15年度が4360億円だったが、16年度はタカタ関連費用はすべて計上し終わったとして、営業利益見通しが前年度比29%増になると発表した。しかし、連結営業利益率は4.9%と依然低水準にとどまっている。世界自動車販売トップ10の利益率平均は6.4%になる。

  遠藤アナリストは「品質関連費用の計上が一段落した後も、利益の改善がいつ期待できるのかという見通しが全く見えない」と述べた。

2020年に向け利益率改善へ

  八郷社長は「今の利益率でいいのか」という思いはあり、北米の利益率は「効率の良い車づくりをする」ことで上げていきたいと述べた。米国ではニーズの多様化に伴い車種構成を増やすなどの対応をしてきており、ライトトラックと乗用車では工場のつくりが違うことから「車づくりの効率が落ちてきている」という。

  八郷社長は、米国の生産現場ではものづくりの精神を大事にし、「俺の車はこうしたいという気持ちが大きい」と語った上で、生産性を考える上では「もう少し制御しないといけない」と述べた。具体的には車台を共用化するなどして、「基礎体力をつけていく」としている。

  八郷社長は20年くらいまで電動化技術の開発をする中で、既存の車台を使い、システムコストを下げる取り組みをしており、利益率の改善についても同時並行で結果を出していきたいという意向を示した。ホンダは30年に全車両の3分の2をプラグインハイブリッドとハイブリッド車、燃料電池車や電気自動車など電動車両に置き換える計画だ。

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