シティグループの日本法人の社員が、外国為替取引指標の操作を試みたとして懲戒解雇されたのは不当であると地位確認を求めていた裁判で、調停が成立したことが分かった。これにより2年近くに及んだ訴訟は終結した。

  ブルームバーグ・ニュースが閲覧した裁判記録などによれば、調停成立により、先月、原告による地位確認請求訴訟は事実上取り下げられた。調停の詳細は非公開だが、シティグループ証券が同社員への懲戒解雇を取り消すことに同意したことが、12日までにブルームバーグの取材で明らかになった。同社での復職の見通しはないという。

  問題となっていたのは「CitiFX Benchmark」や「JPNU」という外為取引指標に影響を与えようとしたとみなされた取引。為替デジタルオプションに係る取引では、ストライクプライスに達するか否かを判定するための基準にこれらの指標がリファレンスレートとして参照されており、その数値により権利を行使できるか否かが決まっていた。

  シティグループ証券の外国為替スポットトレーダーだったこの男性は、問題となった取引は上司らも承知していた通常の取引で、会社は責任追及を逃れるため自身を「スケープゴート」にしたと主張。一方、シティ証は元社員らのチャットには、シンガポールのトレーダーが持つ取引のリファレンスレート(日本時間午後3時のフィキシングプライス)に影響を与えようという「不適正な」意図が現れており、この行為は金融商品の市場を操作する試みに該当、同社が定める行動規範の重大な違反になると主張していた。

  シティ証の広報担当は、事件について言及を避けた。原告の代理人もブルームバーグの取材に対し、コメントできないとしている。

「市場慣行上の通常の取引」

  被告のシティ証が裁判所に提出していた準備書面によれば、これらは公正かつ客観的な指標として長年公表され利用されており、オプション取引の相手方には大口の機関投資家などがいた。シンガポールの同僚のオプショントレーダーは、こうした顧客の利益を顧みることなく、フィキシングプライスを自己の有利な水準とすることでオプション取引で利益を上げようとし、この東京のトレーダーはその意図を理解した上でスポット取引を行い、指標に影響を与えようとした、と主張していた。

  こうしたシティの言い分に対し、東京や香港で現役で働く複数の外国為替トレーダーなどによる陳述書が提出されていて、それらによれば、元社員らが行った取引はシティで普通に行われていただけでなく、11年から13年当時は「市場慣行上の通常の取引」だった。複数の外資系金融機関では問題になったこともなかった。一方で、今は「なるべく避けるべき取引」との意見や、「黒」に近い「グレー」な取引だとの声もあった。

  世界の外為市場では不正操作をめぐり、大手銀行は当局から合計100億ドル規模の制裁金を科せられた。日本では金融当局が外為相場の不正操作などを摘発した例はない。証券取引等監視委員会の佐渡賢一委員長は12日の退任記者会見で、日本の外為市場における公正性や透明性を問われ、問題があるという可能性について「委員長の立場としては認識していない」と答えた。

英文記事:Citigroup Currency Trader Settles Tokyo Wrongful-Dismissal Case

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